現象的意識

現象的意識 (Phenomenal Consciousness)

現象的意識とは、意識に関する区分の一つであり、質的な内容を伴う主観的な体験を指します。この体験に含まれる個々の質感は「クオリア」と呼ばれます。

現象的意識の存在論的な位置づけは、物理学への還元可能性を巡って議論されています。唯物論（物理主義）の立場からは、現象的意識は物理的な特性に還元可能とされますが、二元論の立場からは還元不可能と主張されています。

類義語・同義語

現象的意識という概念には、多くの類義語・同義語が存在します。これらの言葉を知っておくことは、心の哲学や脳科学の文献を読む上で重要です。現象的意識を指す決定的な用語はまだ定まっておらず、研究者は「意識体験」や「現象特性」「クオリア」といった言葉を用いて言及することが一般的です。

よく見られる類義語・同義語としては、以下のようなものがあります。

意識の現象的側面 (phenomenal aspect of consciousness)
意識体験 (conscious experience)
主観的経験 (subjective experience)
質的経験 (qualitative experience)
現象特性 (phenomenal property)
What it is like
感じ・実感 (sensation)
生の感じ (raw feel)

これらの言葉は、文脈によって現象的意識とほぼ同じ意味で使用されることがあります。

ややこしい言葉

現象学 (phenomenology): 心の哲学分野では現象的意識を指すことがありますが、フッサールの創始した哲学の一分野を指すこともあります。文脈から判断する必要があります。
経験・体験 (experience): まれに現象的意識を指すことがありますが、日常的な意味で使用されることの方が多いです。文脈から判断する必要があります。
表象 (representation): 現象的意識とほぼ同じ意味で使われることもありますが、思考や推論の際に変形・操作を受ける心的記号を意味することもあります。文脈から判断する必要があります。

現在、現象的意識を指す言葉として最も頻繁に使用されるのは「意識 (Consciousness)」です。しかし、「意識」という言葉は多義的であるため、文脈に注意して解釈する必要があります。「意識は謎である」「意識の問題は難しい」といった形で使用されている場合、現象的意識または類似の概念を指している可能性が高いです。

性質

現象的意識には、以下の主要な性質があります。

主観性 (Subjectivity): 現象的意識は常に「誰かにとっての」体験です。例えば、痛みは常に誰かの痛みであり、誰のものでもない痛みは考えにくいです。
私秘性 (Privacy): 現象的意識は、外部から物理的な計測器を用いて観測することができません。「我々は意識メーターを持たない」という表現で表されることもあります。
統一性 (Unity): 複数の情報が統合され、継ぎ目のない単一の体験として提示されます。例えば、視覚情報と聴覚情報が統合されて、一つのまとまった認識となります。分離脳患者の場合、脳全体の統一性が損なわれている可能性があります。

異なる脳で処理された情報は、現象的意識として統一されません（他人の腹痛を感じることはありません）。この脳を隔てた場合の現象意識の分離は、グレッグ・ローゼンバーグによって境界問題として定式化されました。

関連項目

意識
ハードプロブレム

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