理科離れ

理科離れと理工系離れの現状とその影響

日本における「理科離れ」や「理工系離れ」は、子供たちの理科への興味や学力の低下、また国民全体の科学技術に対する理解が薄れていることを指します。これが深刻な問題として捉えられているのは、次世代の研究者や技術者が不足することで、ものづくりやイノベーションの基礎が揺らぐ可能性があるからです。

現状

現在、理科離れの明確な定義ははっきりしていません。国際教育到達度評価学会（IEA）が行った「TIMSS2019」の調査によると、日本の生徒は小・中学校での理科の成績は58ヵ国中4位と優れているものの、理科が楽しいと感じる生徒は非常に少ないことが示されています。「理科を勉強することで日常生活に役立つ」と感じる割合も国際的な平均より低いことが確認されています。さらに、小学生が理科が好きだと回答した割合は1999年の調査時点で55%であり、リーダー国はインドネシアやマレーシア、イランでした。

教員側に目を向けると、教職歴が5年未満の教員の中で理科の指導が得意であると答える比率は49%に過ぎません。科学技術に対する一般市民の理解や関心も、アメリカやイギリスに比べて低い状況が続いています。文部科学省の見解では、成人の科学リテラシーの低さが学校教育に影響を与え、次世代における科学教育の力を低下させているとのことです。

一方で、OECDによるPISA調査では、日本の科学的リテラシーは2位に位置しています。日本の学力は国際的に高く評価されている一方で、理工系への進学志願者が減少しているトレンドも指摘されています。特に大学や大学院における理系学部の割合は、過去数十年で着実に減少しています。

原因

理科離れは日本のみならず、他の先進国でも共通の現象です。科学技術が生活の一部として定着している現代、若者は科学技術の成果を享受しているものの、その背後にある科学や技術そのものに対しては興味を示さなくなる傾向があります。このメカニズムを考えると、白鳥紀一氏が示すように、学生たちが「理科」から離れていくのではなく、その実世界を理解しようとする姿勢が欠けていることが背景にあるとされます。

さらに、理系進学に対する否定的なイメージや、基礎研究の成果が実際の仕事に直結しにくい現実が、学生の関心を失わせているとも考えられています。

改善策

この問題に取り組むためには、様々な改善策が提案されています。2007年には日本学術会議が、小学校高学年からの理科専科教員の導入や、博士課程修了者の教員採用を推進することを提言しました。また、文部科学省も理科教育振興策を講じ、特に小・中学校における理科実験の支援を強化しています。

自由民主党の教育再生本部は、大学入試において理科学科目を必修とすることなどを提案しており、地域の理数系教育の中心となる人材の育成を目指しています。

反論

しかし、このような対策には賛否があります。大槻義彦氏は、科学館やイベントが一時的な関心を喚起するものの、持続的な興味を育てることには限界があると指摘しています。また、長沼祥太郎氏は日本の理科教育が現実の自然や科学技術への関心を補うのに十分でないと批判しています。さらに、舟橋正浩氏は、教科書に依存した学びでは、学生たちが科学の重要性を実感することが難しく、受験中心の教育が問題の根本であると警告しています。

結論

理科離れや理工系離れは、単なる教育課題に留まらず、日本の将来にわたる科学技術の発展に影響を及ぼす問題です。教育現場や社会全体でこの課題に取り組むための意識改革が求められています。

もう一度検索