琴路美津子

琴路 美津子

琴路 美津子（ことじ みつこ）は、昭和初期の日本映画界で活躍した女優です。1918年（大正7年）6月5日に生を受けた彼女の短い生涯は、1940年代という早い時期に幕を閉じました。本名を河合 喜久江といいます。

彼女は、映画産業と深い関わりを持つ家庭環境で育ちました。父は、昭和時代に多くの娯楽映画を生み出した映画会社「大都映画」の創業者である河合徳三郎です。また、後に女優として活動した大河百々代は、彼女の妹にあたります。このような家族背景が、琴路美津子が女優の道へと進む上で影響を与えたことは想像に難くありません。

東京市神田区、現在の東京都千代田区界隈で生まれた彼女は、学生時代を青山学院で過ごしました。そして、1933年（昭和8年）に同校を卒業すると、父が経営する大都映画に入社し、本格的に女優としてのキャリアをスタートさせました。彼女は、現代劇を中心に多くの作品に出演し、その溌溂とした演技で観客を魅了しました。

大都映画時代には、当時の人気俳優であったハヤフサヒデトと数多くの作品で共演しています。銀幕での共演は、やがて二人の間に愛情を育むきっかけとなり、結ばれることとなりました。結婚を機に、琴路美津子は惜しまれつつも女優業から引退し、家庭に入ります。彼女のキャリアは短くも輝かしいものでしたが、ここで一つの区切りを迎えることとなります。

1940年（昭和15年）、夫であるハヤフサヒデトが、所属していた大都映画を離れ、満洲映画協会へと移籍することが決まりました。これに伴い、琴路美津子も夫に同行するため、海を越えて満州へと渡りました。しかし、異国の地での生活は長くは続きませんでした。第二次世界大戦が激化する最中に、彼女は病に倒れ、若くしてその命を落としました。具体的な没年や病因については明らかではありませんが、1940年代という、女優としても、そして一個人としてもこれからという時期に、遠い満州の地で短い生涯を終えたのです。

短い活動期間ながらも、彼女は多くの映画に出演しました。主な出演作品の一部を以下に挙げます。

主な出演作品

1934年
空飛ぶ癇癪玉
港の伊達男
地獄の争闘
俺の喧嘩日記
栄冠は躍る
暁の超特急
肉弾の王者
微笑む友情
銀鱗の花籠
闇の顔役
八州股旅恋慕
俺は日本人だ
咆哮炸裂
1935年
闇に叫ぶ狼
暗黒街の人気男
旋風の荒鷲

琴路美津子の名は、父が創設した大都映画の歴史、そして戦前の日本映画史の一ページに、早世の女優として刻まれています。短いながらも、映画に情熱を注いだ彼女の存在は、今もなお、当時の作品を通じて偲ばれています。

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