環境・食糧・農村地域省

イギリスの環境・食糧・農村地域省（Department for Environment, Food and Rural Affairs, Defra）は、国民の生活基盤を支える重要な役割を担う政府機関です。ロンドンのスミス・スクエアにあるノーベルハウスに本庁を置き、環境保護、食糧生産、農業、漁業、そして農村地域社会の活性化といった多岐にわたる分野を管轄しています。

Defraの歴史は2001年に遡ります。口蹄疫がイギリス全土で猛威を振るったことを受けて、迅速かつ効果的な対応の必要性から、既存の農漁業食糧省（MAFF）と環境・運輸・地域省（DETR）の一部、更に内務省の一部を統合する形で創設されました。当時の担当大臣はマーガレット・ベケット氏でした。この再編は、食糧安全保障と環境保全の両面から、より統合的な政策立案と執行体制を構築することを目指したものでした。2008年1月時点では、約9,000人の職員が省の業務を支えていました。

その後、2008年10月には組織再編が行われ、Defraの気候変動対策部門とビジネス・企業・規制改革省（BERR）のエネルギー部門が合併し、新たなエネルギー・気候変動省が設立されました。これは、気候変動対策への取り組みを強化するための措置でした。

Defraの所掌事務は非常に広範囲に及びます。具体的には、環境保全、気候変動対策、生物多様性の維持、持続可能な農業・漁業の推進、食品安全基準の策定、農村地域経済の活性化、そしてそれらに関連する政策の立案と実行などです。国民の健康と安全、そして将来世代のための環境保全を両立させるという、複雑で重要な課題に取り組んでいます。

Defraは、政策の実施を円滑に進めるため、複数のエグゼクティブ・エージェンシーを管轄しています。これら機関はそれぞれ専門的な知識と技術を持ち、Defraの政策目標達成に重要な役割を果たしています。主なエージェンシーとしては以下の4つが挙げられます。

動植物衛生庁 (Animal and Plant Health Agency): 動物や植物の病気の発生予防や、侵入種の管理、そして食品安全に関する検査など、食料生産基盤の維持に不可欠な業務を担っています。
環境・漁業・水産養殖科学センター (Centre for Environment, Fisheries and Aquaculture Science): 海洋環境、漁業、水産養殖に関する研究開発を行い、持続可能な資源管理に貢献しています。科学的根拠に基づいた政策立案を支援する重要な機関です。
農村地域支出庁 (Rural Payments Agency): EUからの農村開発支援金の交付や、農家への直接支払いを管理する機関です。農村地域経済の活性化に大きく貢献しています。
獣医学研究局 (Veterinary Medicines Directorate): 動物用医薬品の安全性と有効性の評価、そしてそれらの規制を担当する機関です。家畜の健康維持に重要な役割を果たしています。

Defraは、これらのエグゼクティブ・エージェンシーと連携しながら、イギリスの環境保全と食糧安全保障、そして農村地域社会の繁栄のために、日々活動を続けています。その活動は、国民生活の質の向上に直結するものであり、今後もその重要性は増していくでしょう。

もう一度検索