甑山

甑山（こしきやま）

甑山は、秋田県由利本荘市と山形県真室川町にまたがる、標高981.3mの山です。東北百名山の一つとして知られ、山形県の加無山県立自然公園内に位置しています。

概要

甑山は、秋田・山形県境に連なる丁岳山地の東端に位置します。江戸時代には、矢島藩、本荘藩、亀田藩が交通の要衝としていた矢島街道（殿様街道）の甑峠の南に位置し、各藩主が参勤交代の際に往来しました。

山域は、急峻な岩場を持つ男甑（おこしき）と女甑（めこしき）の二つの岩峰から構成されています。男甑には二等三角点があり、山頂からは周囲の山々を一望できます。東南面は険しいスラブ状の岸壁をなし、その先には男甑のシンボルである烏帽子岩がそびえ立っています。女甑は標高974mで、男甑よりわずかに低いですが、同様に素晴らしい眺望が開けています。二つの山の鞍部は甑コルと呼ばれ、ここを通って両山に登ることができます。

甑という名前は、米を蒸す木桶の形に由来すると考えられています。また、男甑には烏帽子岩、女甑には女陰のような「赤穴」があり、それぞれ男女の名前の由来となっています。現在、赤穴は樹木に覆われて見えなくなっています。

周辺スポット

甑山の周辺には、自然豊かな見所が点在しています。

名勝沼: 女甑の麓にある沼で、モリアオガエルの生息地として知られています。中央に小さな岩島がある、天然の日本庭園のような美しい景観が広がります。
ウイルソンカツラ: 名勝沼の近くにある巨大な桂の木の株。落雷で株だけが残りましたが、内部は空洞になっており、多くの人が入ることができます。その様子が屋久島のウイルソン株を連想させることから名付けられました。幹周は16m、樹高は5mにもなります。
ガンド森: 秋田県側の林道終点近くにある洞穴です。殿様街道を見下ろす森の中に、盗賊の隠れ家とされたガンド窟が残っています。ガンドとは地元の方言で盗賊を意味します。この場所には、盗賊が盗んだ宝物を隠したという民話が残っています。
薬師如来堂: 山形県側の登山道入り口にある祠。かつては宿坊があり、修験道の行者が甑山に登る際の拠点となっていました。しかし、修行者を騙して金品を奪う俗僧や、強盗目的で修行者を殺害する者まで現れたため、執権北条時頼が当地を訪れ、閉山を命じたという言い伝えがあります。甑山での修行は、女甑の赤穴に安置された秘仏を拝むというものでした。修行者は断食後、険しい山をよじ登り、鎖を伝って岩場を渡り、命綱で逆さ吊りになって断崖にある赤穴の中を覗くという、命がけの荒行を行いました。この「覗きの行」を修めた者は、より高い行者の位を得たとされ、この行にちなんで「及位（のぞき）」という位が生まれたと言われています。
悠森舎: ブナ美林広場にある三角屋根の建物。近くでは『巨木の森コンサート』が開催されています。女甑の大カツラの近くに位置しています。
女甑の大カツラ: 山形県側の前森山林道終点から徒歩約25分の場所にあります。地元では及位マタギから御神木として崇められてきました。明治時代に周囲の天然木が伐採された中、この木だけが残され、周囲のブナ二次林と美しい景観を作り出しています。林野庁選定の「森の巨人たち100選」にも選ばれています。
* 荒沼湿原: 女甑山麓にある湿原で、ハッチョウトンボが生息しています。甑山探究会が保護活動を行っています。

甑山は、豊かな自然と歴史が息づく魅力的な山です。登山はもちろん、周辺の観光スポット巡りもおすすめです。

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