甘泉寺のコウヤマキ

甘泉寺のコウヤマキ

愛知県新城市作手鴨ケ谷の甘泉寺境内に生育するコウヤマキは、日本有数の巨木として知られています。推定樹齢は400年以上とも600年以上ともいわれ、その圧倒的な存在感は訪れる人々を魅了します。このコウヤマキは、国の天然記念物に指定されているだけでなく、「新日本名木100選」にも選ばれており、その価値は非常に高いと言えるでしょう。

2009年10月には台風の被害により上部を大きく損傷しましたが、それでもなお、その雄大な姿は健在です。

コウヤマキとは

コウヤマキは、マツ目コウヤマキ科の常緑針葉樹で、日本と済州島にのみ自生する固有種です。材質が硬く、水に強いため、古くから桶や船の材料として重宝されてきました。古墳時代の木棺にも使われていたほどです。また、2006年には、悠仁親王のお印に選ばれたことでも知られています。

コウヤマキは繁殖力が強くないため、巨木として成長するものは稀です。そのため、甘泉寺のコウヤマキのように国の天然記念物に指定されているものは貴重な存在と言えるでしょう。ちなみに、他に国の天然記念物に指定されているコウヤマキとしては、宮城県大崎市の「祇劫寺のコウヤマキ」があります。

甘泉寺について

甘泉寺は、作手高原の中央部、海抜約600メートルの場所に位置する臨済宗永源寺派の寺院です。正式名称を「翔龍山甘泉寺」といい、本尊は釈迦如来です。「南設楽四国霊場83番」の札所としても知られています。

境内には、1575年の長篠の戦いで、武田軍の包囲を突破して織田・徳川連合軍に援軍を要請したものの、帰路に捕らえられ命を落とした鳥居強右衛門の墓所があります。

寺伝によると、甘泉寺は1370年に近江国の永源寺からやってきた僧侶、弥天永釈によって開山されたとされています。弥天永釈は、この地に到着した際、手にしていた杖を地面に突き立て、「大樹となれ」と一喝したところ、杖が根付いて芽吹き、やがて大木に成長したと伝えられています。この杖が変化した木が、現在の甘泉寺のコウヤマキであるとされています。

甘泉寺のコウヤマキの特徴

甘泉寺のコウヤマキは、開山堂の前にそびえ立っています。地上1.5メートルの幹の周囲は6.25メートル、地際の根回りは7.50メートル、樹高は27.80メートルです。地上約7メートルの位置で幹が二つに分かれ、さらに三つに分かれて合計4本の幹となって直立しています。樹齢は400年以上とも600年以上とも推定されています。

幹には、コケシノブ、ウチワゴケ、ノキシノブなどのシダ類や、セッコク、ヤマハゼなどが着生しており、独特の景観を形成しています。

天然記念物としての指定

甘泉寺のコウヤマキは、その価値が認められ、1972年5月26日に国の天然記念物に指定されました。また、1977年には「作手村の木」に、1990年には「新日本名木100選」にも選ばれています。

アクセス

所在地：愛知県新城市作手鴨ケ谷字門前23

公共交通機関：JR飯田線新城駅からSバス作手線鴨ケ谷口下車徒歩20分。

自動車：東名高速道路「豊川IC」から約30分(29km)。

甘泉寺のコウヤマキは、歴史と自然のロマンを感じさせる、訪れる価値のある名木です。その雄大な姿をぜひ一度ご覧ください。

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