生きるよろこびを

「生きるよろこびを」（いきるよろこびを）は、1971年8月25日に日本コロムビアから発売された、ジャッキー吉川とブルー・コメッツの通算18枚目にあたるシングル盤のタイトル曲である。

この楽曲の制作は、作詞を橋本淳、作曲および編曲を筒美京平という、日本の音楽シーンに数々の名曲をもたらした黄金コンビが手掛けている。彼らがジャッキー吉川とブルー・コメッツの楽曲で再びタッグを組むのは、1968年発表の「涙の糸」以来、間にカバー曲のシングルを一枚挟んだものの、約3年ぶりとなる久々のことであった。

表題曲である「生きるよろこびを」は、そのタイトルが示す通り、人生や愛に対する非常に前向きで希望に満ちたメッセージを内包している。楽曲のサウンド面では、筒美京平による編曲が特徴的であり、ブラス楽器を大胆にフィーチャーしたオーケストレーションが楽曲全体に華やかさとスケール感を与えている。ボーカルは、当時のジャッキー吉川とブルー・コメッツの歌唱を担っていた井上忠夫と三原綱木によるデュエット形式が取られている。

歌詞の内容は、愛するパートナーと共に人生を歩むことの喜びや、共に未来を築いていくことへの希望を明るく歌い上げている。困難な状況をも乗り越え、愛する人と共にいることで得られる「生きるよろこび」を表現しており、聴く者に温かい感動と活力を与える楽曲となっている。この、幸福な愛や明るい未来を歌うポジティブな路線は、同時期に活躍していたヒデとロザンナのヒット曲「愛の奇跡」などが提示したスタイルにも近いものがあるとの指摘も当時見られた。

シングル盤のカップリング、すなわちB面には「その時 雲は流れてた」（そのとき くもはながれてた）が収録されている。こちらの楽曲も、A面と同じく作詞を橋本淳、作曲・編曲を筒美京平が担当している。しかし、楽曲のテーマや雰囲気はA面とは一転している。突然、愛する女性に去られてしまった男性の視点から、失恋の痛みや喪失感が描かれた別れの歌である。

「その時 雲は流れてた」は、別れという内省的で悲しいテーマを扱いながらも、メロディラインはどこか明るさを帯びたマイナーコードで構成されている点が特徴的である。ボーカルスタイルもA面と同様、井上忠夫と三原綱木のデュエットで歌われている。A面の希望に満ちた世界観と、B面の失意の中にもどこか感傷的な雰囲気が漂う世界観とが、一枚のシングル盤の中で見事な対比を成していると言えるだろう。

本シングルが発売された1971年という時期は、ジャッキー吉川とブルー・コメッツがグループ・サウンズ（GS）というジャンルの隆盛を牽引した時代を経て、音楽性やグループのイメージを変化させていた時期にあたる。当時のレコードジャケットにはメンバー5人の集合写真が使用されているが、そこで確認できるメンバー、特に三原綱木のヘアスタイルが、かつて短髪系GSの代表格として知られた頃とは異なり、全体的に長くなっている点が興味深い。これは、グループの視覚的なイメージの変化、そして時代と共に進化しようとする彼らの姿勢を物語る一側面と言えるだろう。

収録内容は以下の通りである。
A面：生きるよろこびを（作詞：橋本淳／作曲・編曲：筒美京平）
B面：その時 雲は流れてた（作詞：橋本淳／作曲・編曲：筒美京平）

本楽曲は、1971年という日本の音楽シーンが多様な展開を見せた時代に発表された楽曲として、「1971年の音楽」という広い文脈の中で位置づけることができる。

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