涙の糸

涙の糸

「涙の糸」（なみだのいと）は、日本の人気音楽グループ、ジャッキー吉川とブルー・コメッツによって1969年4月25日に世に送り出されたシングル楽曲です。

この楽曲の言葉（詞）は、当時多くの歌手にヒット曲を提供していた作詞家の橋本淳氏が紡ぎました。そして、メロディの作曲および楽曲全体の編曲は、この頃からその非凡な才能を発揮し始め、後に日本のポピュラー音楽界に数々の金字塔を打ち立てることになる筒美京平氏が手掛けています。才能あふれる二人のクリエイターが組んだことで生まれた作品と言えるでしょう。

本作がブルー・コメッツのキャリアにおいて特筆される点として、その音楽性が挙げられます。この楽曲は、1960年代後半に国内外で大きな潮流となっていたリズム・アンド・ブルース（R&B）の要素を積極的に取り入れたサウンドプロダクションが特徴です。それまでのブルー・コメッツが発表してきた楽曲、例えば叙情的で美しいメロディラインが際立つ「さよならのあとで」や、アダルトな雰囲気を纏った「雨の赤坂」といった純粋な歌謡曲テイストの作品群とは一線を画す、よりグルーヴィーで洗練されたアプローチが試みられました。これは、当時のグループ・サウンズというジャンルが多様化し、新しい音楽スタイルへの挑戦が求められる中で、ブルー・コメッツが選んだ道の一つであり、音楽的な進化を目指した意欲的な試みであったことがうかがえます。

このシングルのB面には、「ブルー・シャンソン」が収録されています。こちらも「涙の糸」と同様に、作詞は橋本淳氏が、作曲と編曲は筒美京平氏が担当しており、A面と共通する制作陣によって、楽曲全体に統一感のある世界観が与えられています。

市場での反応として、「涙の糸」はオリコン週間シングルチャートで最高位16位を記録しました。これは、直前にリリースされた前作「雨の赤坂」が記録した最高位20位と比較すると、順位をわずかながらも上昇させる結果となりました。グループがかつて記録した爆発的なヒットには及ばないものの、R&B色を強めた新しいサウンドが一定のリスナー層に受け入れられたことを示唆しています。グループ・サウンズ全体の人気がピークを過ぎ、新たな局面へと移行しつつあった時期において、この楽曲が獲得したチャート順位は、当時の彼らの状況と音楽的な方向性を示す重要な指標の一つと言えるでしょう。

結論として、「涙の糸」は、ジャッキー吉川とブルー・コメッツが時代の変化に応答し、筒美京平という気鋭の作曲家と共に、それまでの歌謡曲路線からR&Bを取り入れた新機軸へと挑戦した、グループのキャリアにおける転換点とも見なせる重要な作品です。この楽曲は、日本の音楽史の中で、グループ・サウンズが新しいサウンドを取り込みながら進化しようとした一例として、語られるべき価値を持っています。

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関連項目

* 1969年の音楽

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