生せんべい

生せんべい：知多半島の銘菓

歴史と起源

愛知県知多半島を代表する銘菓「生せんべい」。その歴史は古く、1560年（永禄3年）の桶狭間の戦いにまで遡ります。徳川家康が、知多半島にある母親のいる地に逃れる途中、地元の百姓が庭先に干していたせんべいを生で献上したところ、その美味しさに感激。岩滑城滞在中は、常に生のせんべいを献上させたという逸話が残っています。この出来事が、生せんべいの始まりとされています。以来、地元で愛され続け、現在では広く知られる土産菓子として定着しています。

代表的な製造元：総本家田中屋

現在、生せんべいの代表的な製造元として知られるのが、1930年（昭和5年）創業の総本家田中屋です。同社では、主原料のみを使用したシンプルな「白」と、黒糖を加えた風味豊かな「黒」、そして抹茶を使用した「抹茶」の3種類を生せんべいを製造しています。販売形態も豊富で、個包装されたものから、白と黒がセットになったもの、白・黒・抹茶の詰め合わせなど、様々なニーズに対応しています。個数も9個から60個入りまでと幅広く用意されているため、お土産としてだけでなく、自分用にも気軽に購入できます。

原材料と製法

生せんべいの主な原材料は、国産米、上白糖、蜂蜜です。「黒」に使用される黒糖は沖縄県産、「抹茶」に使用される抹茶は西尾市産と、厳選された素材を使用している点も特徴です。

製法は、米を製粉して水で練り、蒸した後に上白糖と蜂蜜を加えてさらに練り上げます。この生地を薄く延ばし、3枚重ねてから切り分けて乾燥させます。3枚重ねにすることで生地の中に空気が含まれ、独特のもちもちとした食感と豊かな風味を生み出しているのです。

保存料などの食品添加物は一切使用しておらず、賞味期限は袋入りで10日、箱入りで7日（抹茶は4日）と、短いながらも素材の風味を最大限に楽しめるよう配慮されています。

生せんべいを用いた菓子：波まくら

生せんべいを用いた菓子として、知多郡南知多町にある和菓子店「櫻米軒」の「波まくら」があります。江戸時代後期創業の老舗が作る「波まくら」は、生せんべいでつぶあんを包んだ和菓子です。4代目店主が亀屋での修行で学んだ餡と地元の生せんべいを組み合わせ、完成させた逸品です。現在では、定番のつぶあんに加え、梅風味や抹茶風味も販売されています。

生せんべいの特徴

生せんべいは、その名の通り「生」で食べる餅菓子です。もちもちとした食感は、焼いていないせんべいのようで、ういろうや生八つ橋のような生菓子と類似した特徴を持っています。しかし、それらとは異なる独自の風味と食感を持ち、知多半島を代表する銘菓として、多くの人に愛されています。その独特の食感と風味は、厳選された素材と伝統的な製法によって生み出されています。

まとめ

400年以上の歴史を持つ生せんべいは、知多半島の歴史と文化を伝える貴重な存在です。もちもちとした食感とシンプルな材料で作られた上品な甘さは、多くの人を魅了し続けています。お土産としてだけでなく、地元の人々にも愛される生せんべいは、知多半島を訪れた際にはぜひ味わっていただきたい銘菓です。

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