生出塚埴輪窯跡

生出塚埴輪窯跡の概要

埼玉県鴻巣市には、古墳時代後期における埴輪の生産遺跡「生出塚埴輪窯跡」が存在します。この遺跡は、東日本で最大級の埴輪生産地として知られ、その出土品は国の重要文化財に指定されています。

遺跡の位置と発掘の歴史

生出塚埴輪窯跡は、JR東日本の鴻巣駅から北東に約1キロメートル、さらに東方に約2キロメートルの地域に広がっています。これらの遺構は鴻巣警察署の東側に位置し、元荒川沖積地を望む台地上に分布しているため、その地形が埴輪生産に適していたのだと考えられます。標高は19〜20メートルで、沖積地との間には約5メートルの高低差があります。

1976年にこの遺跡が発見され、1979年には埼玉県教育委員会による発掘調査が始まりました。その後、40回以上の調査が行われ、40基の埴輪窯跡や2基の埴輪工房、市街跡などが確認されました。この調査を通じて、生出塚埴輪窯は日本国内でも屈指の埴輪生産地であることが判明しました。

埴輪窯の構造と歴史

埴輪窯は地下式の窖窯で、地表面から2メートル程度掘り下げられていることが特徴です。焼成部は地表に向かって延びており、それぞれの窯は共通の作業場を持ちながらも、順序良く運営されていました。この窯での埴輪生産は、5世紀末から6世紀末にかけて行われたと推測されています。

遺跡の周辺には生出塚古墳群と呼ばれる多くの古墳があり、主に円墳が分布しています。これらの古墳から出土した埴輪は、生出塚埴輪窯で製作されたと考えられています。

埴輪の流通と供給

生出塚窯で生産された埴輪は、埼玉県内のみならず、千葉県、東京都、神奈川県といった幅広い地域に供給されました。例えば、行田市の埼玉古墳群や、南関東の各古墳からは生出塚で作られた埴輪が出土しています。

特に注目すべきは、行田の二子山古墳や、さいたま市の井刈古墳などから出土した埴輪が生出塚産であることが確認されている点です。これにより、当時の埴輪がどのように流通していたのかが明らかになり、河川交通の重要性も浮かび上がっています。

重要文化財としての指定

2005年に、生出塚遺跡から出土した埴輪41点、土師器5点、石製品6点などが「埼玉県生出塚埴輪窯跡出土品」として国の重要文化財に指定されました。特に武人埴輪や貴人埴輪は、その造形や彩色技術において高く評価されています。

武人埴輪は、冑をかぶり、甲冑を身にまとった姿が詳細に表現されており、貴人像は当時の男子の正装を再現しています。これらの埴輪は、当時の技術や美意識を知る貴重な資料として位置づけられています。

現在、これらの出土品はクレアこうのすの歴史民俗資料コーナーで展示されており、訪れる人々にその歴史的価値を伝えています。生出塚埴輪窯跡は、古代の埴輪制作を理解するための重要な場所であり、遺跡とその出土品は今後ますます注目されることでしょう。

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