用量反応関係

用量反応関係（ようりょうはんのうかんけい）

用量反応関係とは、生物に対して化学物質や、放射線、高温・低温といった物理的な作用が加えられた際に、その作用の量や強度と、生体に見られる反応（例えば薬の効果や有害な影響）との間に存在する関連性を指します。

この関係は、特定の一個体が投与量に応じて示す反応の度合いの変化を追う場合と、集団全体における統計的な傾向、例えばある反応を示す個体の割合で捉える場合があります。薬理学や毒性学において基礎となる考え方であり、特に医薬品の開発や、環境中に存在する汚染物質などのリスクを評価する際には、この用量反応関係を詳細に調べることが極めて重要となります。

用量反応曲線

用量反応関係を視覚的に示す一般的な手段として、用量反応曲線が用いられます。これは、通常X軸に与えられた物質の量や物理的な作用の強度を、Y軸にそれに対する生物の反応（個体レベルの応答値や集団内での反応頻度など）を示したグラフです。

X軸で示される用量には様々な表現方法があります。例えば、気体や粉塵、あるいは水中の生物に対しては物質の濃度が用いられます。一方、個体に対して直接投与される場合は、その個体の体重あたりの物質重量（例：体重1キログラムあたり何ミリグラム）などが指標となります。

Y軸の反応指標も多様です。最も極端な反応としては死亡率や生存率がありますが、その他にも特定の症状の発現、薬効の程度、あるいは集団内である効果を示す個体の発生頻度などが用いられます。

用量反応曲線を作成する際、X軸を対数スケールで表示することがしばしば行われます。この場合、多くの場合、曲線はS字状のシグモイド曲線となります。このような曲線形状を解析する際には、ロジスティック関数やプロビット関数などの数理モデルが当てはめられます。

閾値（いきち）

多くの物質や作用においては、ごく少量では生物に discernable な反応が現れない領域が存在します。反応がゼロ、あるいは検出できないレベルにとどまる、このような最小の用量や強さを閾値と呼びます。この閾値の概念は、毒性学や安全性評価において非常に重要です。特に医薬品の分野では、期待される薬効を示す用量と、毒性や副作用が現れ始める閾値との関係性が、その薬剤の安全性を評価する上で非常に重要視されます。

集団における反応指標

集団における反応を評価する場合、Y軸には特定の反応（例えば病気の症状の改善や副作用の発生）を示す個体の割合（パーセント）を用いるのが一般的です。物質の効力や有害性の度合いを示す代表的な指標として、集団のちょうど半数（50%）に特定の反応が現れるのに要する用量が頻繁に利用されます。

薬理学においては、集団の半数に有効な効果が現れる用量を「半数有効用量 (ED50: Median Effective Dose)」と呼びます。一方、毒性の評価においては、半数に有害な影響が見られる用量が「半数毒性用量 (TD50: Median Toxic Dose)」、そして半数が死亡する用量が「半数致死用量 (LD50: Median Lethal Dose)」と称され、これらは特に毒性の強さを示す重要な指標となります。もし有害性として死亡以外の反応を指標とする場合は、ED50や、特定の機能や反応が半数阻害される用量を意味する「半数阻害用量 (ID50: Median Inhibitory Dose)」といった用語が使われることもあります。

このように、用量反応関係の解析は、様々な物質や作用が生物に与える影響を定量的に理解し、その安全性やリスクを適切に評価するための基盤となります。

関連分野・用語

薬学
薬理学
薬力学
毒性学
リスクアセスメント
一日摂取許容量（ADI）
耐容一日摂取量（TDI）
実質安全量 (VSD)
無有害作用量
致死量

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