田中功起

田中功起（たなか こおき）は、1975年12月6日に栃木県芳賀郡益子町で生まれた、日本を代表する美術家、映像作家です。東京造形大学の客員教授、京都市立芸術大学の准教授として後進の指導にもあたっています。

生い立ちと初期の活動

田中は1998年にウィーン美術アカデミーに短期留学し、美術の世界に足を踏み入れました。2000年には東京造形大学美術科絵画専攻を卒業、その後2005年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程を修了しています。さらに、ポーラ美術振興財団の助成を受けてパリに滞在し、2009年には文化庁新進芸術家海外研修制度によりロサンゼルスに留学するなど、国内外で研鑽を積みました。

ヴェネツィア・ビエンナーレと「表現の不自由展」

2013年には、ヴェネツィア・ビエンナーレの日本代表として参加し、国際的な評価を高めました。また、「あいちトリエンナーレ2019」では、展示中止となった「表現の不自由展・その後」に対し、他の参加作家とともにステートメントを発表。自身の展示作品《抽象・家族》（2019）を「再設定」するという形で、表現の自由という問題に深く関わりました。

主要な展覧会

田中の作品は、国内外の多くの展覧会で展示されています。初期の活動では、2000年の「ナガミネプロジェクツ」を皮切りに、2001年には「田中功起展─隠れ作業」（ギャラリーαＭ）や「SAP Art-ing 東京2001」（セゾンアートプログラム）に参加。その後も、2002年の「スクリーン・メモリーズ」（水戸芸術館）、「MIT テストウォールプロジェクトNo.2 〈Spinning〉」（MIT リスト・ヴィジュアル・アートセンター）など、様々な場所で作品を発表しました。

2000年代後半以降も、「六本木クロッシング－日本美術の新しい展望2004」（森美術館）、「台北ビエンナーレ」、「第7回光州ビエンナーレ」など、国際的な展覧会への参加も多く、2013年には「抽象的に話すこと - 不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」（ヴェネツィア・ビエンナーレ）で注目を集めました。

近年では、「ジャーナル」（ICA、ロンドン）、「ポジションズ」（ファン・アッベ美術館）、「田中功起　共にいることの可能性、その試み」（水戸芸術館）、「ミュンスター彫刻プロジェクト2017」（ミュンスター）など、個展やグループ展で精力的に活動しています。

作品の特徴とテーマ

田中の作品は、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど多岐にわたりますが、共通して「社会的な文脈における個人の行動」や「他者との関係性」をテーマにしています。日常生活における何気ない行為や状況を捉え、そこから社会構造や人間の心理に迫る手法は、観る者に新たな視点を提供します。また、参加型プロジェクトや共同制作を通して、他者との協働や関係性を重視した作品づくりも特徴です。

著作活動

美術家としての活動に加え、執筆活動も積極的に行っています。『リフレクティヴ・ノート(選集)』(2021年)、『B面がA面にかわるとき [増補版]』(2016年)をはじめ、『共にいることの可能性、その試み、その記録 ―田中功起による、水戸芸術館での、ケーススタディとして』(2016年)、『地域アート――美学/制度/日本』(2016年)など、自身の作品や思想をまとめた書籍を多数発表しています。これらの著作は、美術史や現代社会に関する考察を含み、読者に深く考えるきっかけを与えています。

作品鑑賞

田中の作品は、以下のリンクから鑑賞できます。

Vimeo
YouTube

まとめ

田中功起は、美術家、映像作家として、現代社会における人間関係や社会構造を問い続けるアーティストです。彼の作品は、我々に日常的な視点から社会を捉え直す機会を与えてくれます。国内外での精力的な活動は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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