田中和夫 (昆虫学者)

田中和夫

田中和夫（たなか かずお、1928年12月6日 - 2024年3月5日）は、日本の昆虫学者であり、特にカ科昆虫の研究において多大な貢献をしました。日本国内はもとより、世界中のカ科昆虫の研究を進め、その分類と生態に関する知識を深めました。

生涯

1928年、田中和夫は東京都に生まれました。父親が銀行員であったため、転勤が多く、小学校・中学校時代は各地を転々としました。幼少期から野球と昆虫採集に熱中し、自然に対する深い関心を育みました。第二次世界大戦末期には、喘息の悪化により疎開先の新潟県で中学校を中退しています。

終戦後、千葉県へ移住。その後、海外勤務期間を除き、関東地方を中心に生活しました。マイマイカブリをはじめとするオサムシ科昆虫の採集をライフワークとし、関東地方や疎開先の新潟県で精力的に活動。新種記載を含む多数の論文を発表し、生涯で約60種の新種を記載しました。

1962年には、東京農業大学から博士号を授与されました。博士論文では、マイマイカブリの生態や種間交雑について研究しています。収集したオサムシ科の標本コレクションは16,379点に及び、農業・食品産業技術総合研究機構（農研機構、NARO）に寄贈され、貴重な研究資料として活用されています。

1965年から1978年まで、神奈川県で米軍の昆虫学者として勤務し、この期間に日本と韓国のカ科昆虫に関する調査研究を進め、1979年に総説論文を発表しました。1979年から1981年には、国際協力機構（JICA）の北スマトラ州でのプロジェクトにマラリア専門家として参加し、熱帯地域における衛生問題にも取り組みました。

1981年からは、害虫駆除会社である株式会社帝装化成に勤務。1987年～1989年には、JICAのタイ王国でのプロジェクトに衛生害虫専門家として参加し、国際的な活動を続けました。1985年には、カ科の分類学的研究により日本衛生動物学会賞を受賞。1996年には、日本家屋害虫学会（現：都市有害生物管理学会）の学会賞を受賞しました。帝装化成在職中には、カ科をはじめとする様々な害虫に関する科学論文や入門書を約30篇出版し、家屋害虫に関する知識の普及に貢献しました。

1997年に帝装化成を退職後、再びカ科の研究に専念。2004年には、アメリカ蚊類防除協会（AMCA）のベルキン賞をアジア人として初めて受賞し、国際的な評価を確立しました。2014年に出版された『日本昆虫目録』第8巻（双翅目）では、カ科の章を執筆し、日本の昆虫学研究に大きく貢献しました。

晩年は癌との闘病生活を送りながらも、研究への情熱を失うことはありませんでした。2024年3月5日、神奈川県にて95歳で逝去されました。

田中和夫の業績は、カ科昆虫の研究分野において、かけがえのない財産として後世に受け継がれていくでしょう。

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