田中煕巳

田中煕巳の人物像

田中煕巳（たなか てるみ、1932年4月29日生まれ）は、日本国内外で核廃絶を促進する活動を行っている著名な運動家です。日本原水爆被害者団体協議会（通称：被団協）での長年にわたる活動を通じて、被爆者の権利や歴史を守るために尽力してきました。特に、2024年10月11日には、彼が代表委員を務める被団協がノーベル平和賞を受賞し、その功績が広く認められることとなりました。

生い立ちと教育

田中は1932年に中国東北部（旧満洲）で生を受けました。彼の父は陸軍軍人でしたが、脳出血で早逝しました。家族のもとを離れ、親戚を頼りに長崎市に移ることになりました。幼少期は軍人を目指していましたが、1945年の8月9日、長崎で原爆が投下された際、自宅で被爆します。この出来事によって、彼は親族5人を失い、彼自身も心に深い傷を負いました。

この経験は、彼の人生を大きく変えることになります。原爆の影響で自宅のガラスが割れなかった理由を考えるうちに、物理学へ興味を持つようになりました。1951年には長崎県立長崎東高等学校を卒業し、その後東京大学の生協で働きながら受験勉強をし、1956年に東京理科大学に進学。1960年に卒業後、東北大学工学部に助手として勤務し、1995年からは助教授に昇進しました。

被爆者運動への参加

田中は教育職と並行して被爆者の権利擁護活動にも参加します。1985年からは日本原水爆被害者団体協議会の事務局長に就任し、20年間その職務を全うします。この間、彼は国際的な核兵器問題にも関与し、特に核拡散防止条約（NPT）に関する会議に参加。2005年のNPT再検討会議では大規模な原爆展を開催するなど、被爆体験を広めることに力を注ぎました。

その後、田中は被団協の代表委員に就任し、被爆者支援や国家補償の実現を目指しています。また、彼は被爆体験の継承の重要性を強調し、国内外で講演を通じてそのメッセージを伝えています。

核兵器廃絶への期待

田中は2016年にオバマ大統領が広島を訪れた際、記者会見で「もろ手を挙げては歓迎できない」との発言をし、核兵器廃絶に向けた具体的な行動を期待しています。彼は、過去の謝罪が核兵器廃絶の妨げになるのであれば求めない意向も示しました。被団協は今後も、核兵器のない世界を目指して活動を続けていくことを宣言しています。

田中煕巳氏の功績は、ただ過去の悲劇を語るだけでなく、未来に向けた希望を訴えるものであり、国際的な核廃絶運動の象徴的位置にいます。今後も彼の活動は、多くの人々にインスピレーションを与え続けることでしょう。

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