田中魁秀

田中魁秀九段：温厚な棋風と類まれな記録を持つ棋士

田中魁秀九段は、1947年3月2日生まれの大阪府枚方市出身の将棋棋士です。棋士番号は104。本間爽悦九段を師事し、1969年10月に四段としてプロ入りを果たしました。2015年12月31日に引退するまで、長きに渡り第一線で活躍しました。

棋歴：王位戦リーグや十段リーグへの参戦、そして順位戦での活躍

田中九段は、王位戦において目覚ましい活躍を見せました。第12期、第14期、第18期と予選を勝ち抜き、リーグ戦への出場を果たしています。特に第14期白組では、全勝の中原誠九段に敗れたものの3勝1敗と好成績を収め、リーグ残留を達成しました。また、中堅時代には、当時最難関と言われた十段リーグの予選を突破し、リーグ戦に参加した経験も持ちます。1980年度の十段リーグでは、勝浦修九段と米長邦雄九段からそれぞれ1勝を挙げましたが、リーグ陥落となりました。

40代に入ると、健康上の理由から不戦敗が増加し、1988年から1997年にかけて11回の不戦敗を経験しました。しかし、還暦を迎えた後もトーナメントプロとしての意欲は衰えず、若手棋士相手に健闘を続けました。2010年の第69期順位戦C級1組8回戦では、当時昇級争いをリードしていた広瀬章人王位を破るなど、最後までその棋力は衰えませんでした。

棋風：積極的な攻め合いを重視する居飛車党

田中九段は居飛車党で、玉形を固く囲わず、積極的に攻め合いを仕掛ける棋風で知られています。健康上の配慮から、対局後の感想戦を省略したり、短時間で済ませることが多くなった時期もありました。

人物：温厚な人柄と庭いじりの趣味

温厚で気さくな人柄で知られる田中九段。奨励会員時代には師匠である本間九段から厳しい指導を受けていた一方、自身は弟子を叱責することを好まず、後進の育成にも尽力しました。趣味は庭いじりです。

弟子とエピソード：改名秘話と珍しい記録

田中九段の弟子には佐藤紳哉七段がいます。また、四段昇段時は「正之」という名前でしたが、1978年に「魁秀」に改名しました。これは師匠である本間九段の姓名判断によるもので、酒席で半ば強引に改名させられたエピソードは有名です。 「魁」の字は秋田魁新報から取ったと言われています。

田中九段はタイトル挑戦0回ながら通算600勝を達成し、将棋栄誉賞を受賞した、A級に在籍したことがない珍しい九段棋士として知られています（この記録を持つ棋士は、田中九段と脇謙二九段のみです）。

成績と昇段履歴：B級2組在籍の記録

通算成績は659勝780敗。主な棋戦優勝は1回。また、順位戦B級2組在籍期数25期（最長記録）、対局数250局（最多記録）という驚異的な記録も残しています。

昇段履歴は、1960年奨励会入会、1963年初段、1969年四段、1971年五段、1973年六段、1974年七段、1984年八段、2000年九段、2015年引退というものです。

その他表彰：現役勤続25年、40年、将棋栄誉賞

1994年に現役勤続25年、2009年に現役勤続40年を迎え、2006年には通算600勝達成により将棋栄誉賞を受賞しています。

田中魁秀九段は、その温厚な人柄と、持ち前の積極的な棋風、そして類まれな記録の数々によって、将棋界に大きな足跡を残した棋士と言えるでしょう。

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