田丸昇

田丸昇九段：波瀾万丈の棋士人生

田丸昇九段は、1950年生まれの長野県出身の将棋棋士です。2016年10月に引退するまで、実に41年間もの間、プロ棋士として活躍しました。佐瀬勇次名誉九段を師事し、棋士番号は109番。その棋士人生は、数々の記録とエピソードに彩られた、まさに波瀾万丈と言えるものでした。

順位戦とA級初昇級

田丸九段は順位戦において、安定した強さを見せつけました。B級1組には通算16期にわたって在籍し、47歳という年齢までその座を守り続けました。そして、41歳でA級に初昇級を果たした際には、木村義徳九段の記録に次ぐ史上2位の年長記録として話題を呼びました。さらに、タイトル挑戦、棋戦優勝、将棋大賞受賞のいずれの経験もないままA級に昇級した史上初の棋士という、類まれな経歴も持ち合わせています。

挑戦者決定戦進出と500勝達成

1989年度の棋王戦では挑戦者決定戦に進出。惜しくも大山康晴十五世名人には敗れましたが、この対局は、大山名人の最後のタイトル戦、そして史上最年長66歳でのタイトル戦出場という歴史的瞬間となりました。2005年には通算500勝を達成。竜王戦6組で松浦隆一七段を相手に勝利し、この節目を迎えました。

フリークラス転出と異例の九段昇段

2008年度順位戦ではC級2組で全敗を喫し、フリークラスへの転出を余儀なくされました。しかし、2013年、フリークラス棋士の昇段規定に基づき、九段に昇段。この昇段は、フリークラス規定による史上初の九段昇段という快挙でした。この昇段発表は、田丸九段本人に事前に通知されることなく、日本将棋連盟の公式ホームページに掲載されたため、本人を驚かせたという逸話も残っています。

引退と最後の対局

フリークラス規定に基づき、2015年度の全対局終了後を引退時期としていた田丸九段は、2016年3月31日に引退を発表。引退間際にも関わらず、竜王戦6組昇級者決定戦に出場。準決勝まで勝ち進む健闘を見せましたが、準決勝で門倉啓太五段に敗れ、10月25日付で引退となりました。

将棋との出会いからプロ入りまで

田丸九段が将棋を始めたきっかけは、小学6年生の夏休みに聞いた村田英雄の「王将」だったと言われています。1965年、6級で奨励会に入会。中学卒業後は師匠である佐瀬勇次九段の家で内弟子として生活を送りました。奨励会入会試験では、師匠と奨励会幹事との間で内々の合意があったという、当時ならではのエピソードも残されています。

多彩な活動

田丸九段は将棋の普及にも大きく貢献しました。将棋雑誌だけでなく、スポーツ新聞などにも執筆活動を行い、「新里緑」というペンネームも使用していました。NHK将棋講座の講師を務めた経験や、日本将棋連盟出版担当理事、将棋世界編集長なども歴任。長年「対局手合係」を務めたことでも知られています。また、自身の著書「将棋界の事件簿」などを通して、将棋界の内情を広く伝える活動も行いました。

棋風と人物像

田丸九段は居飛車党で、定跡にとらわれない独自の戦法を好むことから「つっぱり流」と呼ばれていました。30代後半で総白髪の長髪だったことから「ライオン丸」という愛称で呼ばれることもありました。対戦相手への敬意を払う一方で、勝負には真剣に取り組む姿は、多くの棋士やファンに強い印象を与えました。

まとめ

田丸昇九段は、数々の記録とエピソード、そして独特の棋風と人となりで将棋界に名を残した棋士です。その棋士人生は、後世の棋士たちにとって貴重な教訓と示唆を与え続けるでしょう。彼の功績は、将棋界の歴史に永遠に刻まれることでしょう。

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