田出井山古墳

田出井山古墳（反正天皇陵）

田出井山古墳は、大阪府堺市堺区北三国ヶ丘町に位置する前方後円墳です。百舌鳥古墳群を構成する重要な古墳の一つであり、宮内庁によって第18代反正天皇の陵墓「百舌鳥耳原北陵」として管理されています。2019年には、世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-」の構成資産として登録されました。

概要

古墳は百舌鳥古墳群の北端に位置し、大阪湾を望む場所に築かれました。全長約148メートル、後円部径約76メートル、高さ約13メートル、前方部幅約110メートル、高さ約15メートルを測ります。墳丘は3段に築成され、くびれ部の西側には造り出しがあります。周囲には盾形の内濠が巡り、かつては外濠を含めた二重の周濠であったことが発掘調査で判明しています。また、円筒埴輪、形象埴輪、須恵器などが出土しており、これらの特徴から5世紀中頃の築造と考えられています。

古墳の周辺には、陪塚と推定される鈴山古墳・天王古墳があり、これらも宮内庁によって管理されています。

江戸時代の絵図には「反正天皇陵」や「楯井陵」と記されています。「楯井」は当地の広域地名である向井の別称であり、それが転じて田出井になったとされています。前方部側の北東角の内濠には、方違神社の境内が接しています。

ただし、天皇陵に比定されている百舌鳥耳原三陵の中で、田出井山古墳は他の二つの古墳（大仙陵古墳、上石津ミサンザイ古墳）に比べて規模が小さいため、本当に反正天皇陵であるか疑問視する意見もあります。宮内庁も土師ニサンザイ古墳を反正天皇の陵墓参考地としています。

出土品

古墳からは、瑪瑙製の勾玉や須恵器台が出土しています。また、円筒埴輪や形象埴輪（蓋型埴輪、家形埴輪、人物埴輪の手の部分）も出土していますが、原位置を保っていません。これらの埴輪の特徴から、5世紀後半でも古い段階のものであると考えられています。特に、反正天皇陵古墳の後円部北東側からは円筒埴輪が多数出土しています。

規模

田出井山古墳
墳丘長：148メートル
後円部：3段築成、直径76メートル、高さ13メートル
前方部：3段築成、幅110メートル、高さ14.8メートル
鈴山古墳（陪塚）：方墳、墳丘長22メートル、高さ3メートル
天王古墳（陪塚）：方墳、墳丘長11メートル、高さ3メートル

周濠は現在一重ですが、元は二重濠でした。この二重濠は、1980年と1987年の堺市教育委員会と宮内庁による調査で確認されています。内濠と外濠の間の内堤は約23メートル、外濠幅は約11.5メートルでした。外濠が埋まったのは、13世紀中ごろから14世紀後半と考えられています。

調査概要

堺市による発掘調査は、前方部東側（調査地1）、前方部南東隅（調査地2）、前方部南西隅西側（調査地3）、後円部北部（調査地4）で実施され、それぞれから外濠が検出されました。また、範囲確認調査や工事立ち合い調査でも外濠が検出されています。前方部側の外濠は調査数が少ないものの、それ以外では調査数が多く、外濠の存在がほぼ確定しています。

各調査地点からは、円筒埴輪、朝顔形埴輪、蓋型埴輪、人物埴輪などの遺物が出土しています。調査地2・3からは5世紀代の須恵器台、調査地3からは瑪瑙製の勾玉が出土しました。円筒埴輪は直径35センチメートル程度の中型品が主体ですが、全容を残す個体がないため、突帯の条数や器の高さは不明です。

外濠は少なくとも外肩に葺石が施され、内提、外提に埴輪が設置されていたことが判明しました。ただし、ほとんどの調査地で帯水を示す状況がないことから、築造時の外濠は空堀であったと考えられます。外濠の平面形状は、後円部よりも前方部がやや広がる盾形であり、規模は南北の墳丘主軸長で約270メートル、前方部での最大幅約250メートルと推定されています。

内濠と外濠の後円部から前方部への開き具合や、円筒埴輪から考察すると、ニサンザイ古墳よりも遡る可能性が示唆されています。

世界遺産

2019年7月6日、世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-」の構成資産として登録されました。

交通アクセス

* 南海高野線堺東駅 東へ徒歩5分

もう一度検索