田口和行

田口 和行

現代音楽作曲家である田口 和行は、1982年7月30日に鹿児島県鹿屋市に生まれました。彼の音楽キャリアは、一般的な道のりとは異なるユニークな背景を持っています。

経歴と音楽への道のり

鹿児島県立鹿屋高等学校を卒業後、鹿児島大学教育学部数学専攻に進学しましたが、途中で中退し、音楽の道へ進むことを決意します。作曲は専門教育機関ではなく、独学で習得しました。

高校時代は、自身で作詞作曲した歌を披露するシンガーソングライターを目指していました。しかし、友人から提供された詞に曲をつけ、それを歌った経験が、彼の中で大きな転換点となります。歌を伴わない「曲単体での表現」の可能性に触れたことが、現代音楽作曲家としての道を志すきっかけとなったのです。

人物と意外な一面

音楽家としての活動の一方で、彼はアニメ文化への深い愛情を持つことでも知られています。特に人気シリーズである『THE IDOLM@STER』や『プリキュアシリーズ』のファンであることを公言しており、公式SNSアカウントでの投稿の多くはこれらの話題に関連しています。特に、プリキュアのテレビ放送時に行われる「じゃんけん」に関するツイートは、時に音楽関係者の間で話題になるなど、その多才な一面がうかがえます。

作風の特徴

田口の作品における最大の特徴は、極めて数理的なアプローチを取り入れている点にあります。作曲に際して、影響を受けた特定の出来事や、作品を演奏する奏者に関する情報などを素材とし、これらを数理的な理論に基づいた独自のシステムを通して音楽へと変換する手法を用いています。さらに、楽器を演奏する際の物理的な動作、例えば運指そのものをシステムで分析し、これを音高として作品に組み込むといった試みも行われており、彼の作品からは一貫して数理的な思考が読み取れます。このような数理的アプローチについては、数学者の小平邦彦や作曲家の松平頼暁らの思想から影響を受けていると述べています。

数理的手法を基盤としつつも、田口はそこに彼自身の独自のシステムや感覚を重ね合わせることで、作品が過度に機械的で無機質な響きになることを避けています。この絶妙なバランス感覚から生み出される「美しさ」や「カッコよさ」は、多くの聴衆や演奏家から支持を得ています。

多くの作品では、まずタイトルを先に決定することが制作の出発点となります。タイトルは、その後の作品の具体的な内容や方向性を定める重要な要素となります。また、彼は作曲において「音楽の文法」を強く意識しており、楽曲全体の構成はもちろんのこと、特殊奏法を用いる際にも、この文法から逸脱しないよう細心の注意を払っています。

受賞歴

キャリアを通じて、田口和行はその才能が高く評価され、数々の重要な賞を受賞しています。

2002年：スクウェア（現：スクウェア・エニックス）植松ラヂヲ「第1回アレンジ道場」ノビヨ賞
2009年：第26回日本現代音楽協会作曲新人賞富樫賞
2010年：第2回広島作曲コンクール（大学生・一般部門）第1位
2010年：第27回日本現代音楽協会作曲新人賞入選
2010年：上田希リサイタル「毒っとクラリネット！」公募選出作品第1位
2011年：eX.16「マグナムトリオ、現代音楽を吹き飛ばす。」公募招待作品
2011年：日本現代音楽協会アンデパンダン展招待作品

主要作品

彼の代表的な作品には以下のようなものがあります。

アンサンブル、室内楽作品

マンドリン協奏曲『六花』
クローバー・バランス
スパークリング
虹蛇
爪紅
tan5°
initiation
Astra polorum～『モンテヌス写本』より
Daydream Dance I
Reflectors
in the dark
椿
葉桜

ソロ作品

雫
moonlight dancer
かぎろい
a frozen doll
楓
-ade

邦楽器作品

あわてことやのあわてとこや
夜想曲

出版

主要作品の一つである「Daydream Dance I」は、Edition Tre Fontaneより2012年に楽譜が出版されています。

田口和行は、数理的な思考と独自の感性を融合させた独特の音楽世界を構築し、現代音楽シーンにおいて注目される存在です。

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