田口弘 (詩人)

田口弘：詩人、教育者、そして「日本スリーデーマーチの育ての父」

田口弘（たぐちひろし、1922年3月18日-2017年2月9日）は、埼玉県東松山市を拠点に活躍した詩人であり、教育者でした。東松山市教育委員会教育長を務めた経歴を持ち、その活動は同市の教育、体育、文化、芸術の各分野に多大な影響を与えました。特に「日本スリーデーマーチの育ての父」として広く知られ、高村光太郎や高田博厚といった著名な文化人との交流も深く、彼らとの絆が田口氏の生涯と活動に大きな彩りを添えています。

高村光太郎との出会い、そして生涯にわたる交流

田口氏の生涯は、高村光太郎との出会いを境に大きく展開していきます。旧制松山中学校時代、国語教師であった柳田知常先生との出会いをきっかけに高村光太郎の作品に深く感銘を受け、熱烈なファンとなります。以来、高村光太郎の著作を収集し、その作品世界に深く傾倒していきました。太平洋戦争中は海軍教員として従軍、戦地でさえも高村光太郎への思いを胸に秘めていました。終戦後、疎開先の岩手で高村光太郎を再訪したエピソードは、二人の強い絆を示す象徴的な出来事です。高村光太郎の死後も、その作品や精神を継承し、多くの著作や講演活動を通して、高村光太郎の世界を広め続けました。

教育者としての貢献と「日本スリーデーマーチ」

教員生活の傍ら、田口氏は日教組中央執行委員や埼玉県教組委員長などを歴任し、教育現場で指導的役割を担いました。1976年から16年半にわたって東松山市教育委員会教育長を務め、その間、地元の多くの小中学校の校歌の作詞も手がけています。教育長としての活動以外にも、日本ウォーキング協会副会長や評議員会長などを務め、地域社会への貢献を続けました。

特に注目すべきは「日本スリーデーマーチ」への貢献です。「日本スリーデーマーチの育ての父」と呼ばれるほど尽力し、東松山市での開催に尽力、市の小中学校の参加を推進した功績は多大なるものです。

高田博厚との協働による高坂彫刻プロムナード

高田博厚との交流も田口氏の活動に大きな影響を与えています。高田博厚は彫刻家として知られ、田口氏と協力して東武東上線高坂駅前に高坂彫刻プロムナードを建設しました。このプロムナードは、高田博厚の彫刻群によって彩られ、東松山市の街の景観に大きな魅力を与えています。

晩年と高村光太郎資料の寄贈

晩年には、長年収集してきた高村光太郎関連の書簡や書幅を東松山市に寄贈しました。これらの貴重な資料は、現在、東松山市立図書館に「田口弘文庫 高村光太郎資料コーナー」として公開され、多くの人々に閲覧されています。この資料コーナーは、田口氏の高村光太郎への深い愛情と、地元への貢献の精神を示す、重要な遺産となっています。

まとめ

田口弘の生涯は、詩人、教育者、そして「日本スリーデーマーチの育ての父」としての多様な顔を持つ、実に充実したものでした。高村光太郎、高田博厚といった著名な文化人との交流、東松山市への貢献、そして後世に残された貴重な資料は、田口弘という人物の輝かしい功績を物語っています。彼の活動は、これからも東松山市の発展に貢献し続け、多くの人の記憶に刻まれることでしょう。

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