田子の浦港ヘドロ公害

田子の浦港のヘドロ公害とその影響

田子の浦港ヘドロ公害は、1960年代から1970年代初頭にかけて静岡県富士市で発生した著名な公害問題であり、環境と健康に重篤な影響を及ぼしました。特に製紙業界から発生したヘドロは、港湾の機能だけでなく、住民の生活や経済活動にも深刻な影響を与えました。また、気管支喘息（通称富士喘息）と呼ばれる健康問題も、この時期に広がりました。

ヘドロ公害の概要

田子の浦港に存在するヘドロは、港の悪臭や浑濁水を引き起こすなど社会的な問題を引き起こしました。公害の影響は駿河湾にまで及び、時には5,000人以上が参加する抗議運動が展開されました。さらに、気管支喘息の患者数も増加し、1970年代には1,000人以上の公害健康被害者認定がされたことが記録されています。

ヘドロ公害の背景

ヘドロ公害の発生は、製紙会社による大量の排水や地下水の塩水化に起因しています。1890年には富士製紙が汚水を放流し、地域住民から補償請求があったことから、この問題は徐々に顕在化していました。1960年代に入ると、問題はさらに深刻化し、1965年から1969年の間には、苦情件数が3倍に増加するという状況が生まれました。このため、1968年には富士市が「公害課」を設置し、公害対策に取り組むこととなりました。

公害の影響と対策

特に1970年には漁師たちが港に集まり、抗議の活動を行いました。この時期、多数の製紙会社が浄化処理場の設置を迫られ、約34億円が投じられました。一方で、高度な浚渫作業が続けられ、1971年までには港に120万トン以上のヘドロが堆積していることが確認されました。

また、悪臭問題に関する対策も行われましたが、効果には限界があり、1980年には「富士市悪臭公害防止対策指導要綱」が制定されました。さらに、製紙業界によって引き起こされた騒音問題も、住民にとって大きな悩みの種でした。このような背景の中、地域住民は公害対策に向けた取り組みを行い続けました。

大気汚染と健康被害

ヘドロ公害に加えて、大気汚染も深刻な問題として浮上しました。「富士喘息」として知られる気管支喘息は、特に1967年から1968年にかけて多発しました。多くの幼児が呼吸器疾患を抱え、多くの健康診断が実施され、症状の有意差が確認されました。1971年には、富士市が大気汚染による健康被害を救済するための条例を制定しました。

政治の変化

公害问题は富士市の政治に大きな影響を与え、選挙戦の争点となった結果、革新自治体に移行しました。また、1974年からは「公害健康被害補償法」が施行され、国と市が制度を整えていきました。

ダイオキシン問題

時を経るにつれ、新たな問題としてダイオキシン類の存在が浮かび上がります。1990年代には、それに対する対策が講じられましたが、2000年代に再び高濃度のダイオキシンが確認され、その処理問題が未解決のままとなっています。これにより、富士市は引き続き公害防止に向けた取り組みを継続する必要があります。

田子の浦港のヘドロ公害は、今なおその教訓を次世代に伝え、地域住民の環境への配慮を促す重要なシンボルとして位置付けられています。

もう一度検索