田宮五郎

田宮五郎：父・田宮二郎の影と、自ら切り開いた俳優人生

田宮五郎（たみやごろう、1967年1月13日 - 2014年11月6日）。その名は、昭和を代表する名優・田宮二郎を父に持ち、多くの期待を背負いながら、短いながらもドラマチックな人生を駆け抜けた俳優を想起させます。本名・柴田英晃。旧芸名・田宮英晃。186cmの長身と端正な顔立ち、そして父譲りの落ち着いた物腰は、多くの視聴者の心を掴みました。

1967年、東京都に生まれ、東京農業大学農学部畜産学科を卒業。俳優を志しながらも、父・二郎の「俳優になるなら人間を知ってから」との遺言を胸に、大学卒業後、日本語教師、新聞配達、料理人、大工、造園業、司法書士事務、記者など、実に60種類以上の職業を経験しました。その中には、1997年の女子プロレスラー・千春のデビュー密着取材も含まれています。さらに、2002年から2003年には飲食店「喰処かぶき」を経営するなど、多様な経験を積んだ人生は、後の演技に深みを与えたと言えるでしょう。

28歳で結婚し、娘にも恵まれますが、約8年後には離婚を経験しています。

39歳という年齢で俳優デビューを果たしたのは2006年2月、高瀬プロダクション所属後、NHK土曜ドラマ『人生はフルコース』で、田宮英晃名義で芸能界に足を踏み入れました。デビューの経緯は、父の言葉を実践する過程として、多様な職業経験を積んだ結果であり、単なる二枚目ではなく、人間の内面を深く表現できる俳優を目指した証でもあります。

2007年3月、ABeBeに移籍し、芸名を田宮五郎に改名。TBSドラマ『孤独の賭け〜愛しき人よ〜』で冷徹なビジネスマン役を演じ、注目を集めました。その後も、『水戸黄門』など数々のドラマに出演、確かな演技力で存在感を示しました。共演者からは「周りに気を使う人」と評されるなど、温かい人柄も知られていました。

しかし、2012年4月、くも膜下出血で倒れます。役作り中の筋力トレーニング中に発症したという事実は、彼の役者としての情熱を改めて示すものと言えるでしょう。8時間に及ぶ手術の後、昏睡状態が続きましたが、奇跡的に回復。左半身に麻痺が残るも、リハビリを経て退院しました。しかし、レギュラー出演していたドラマを降板せざるを得ませんでした。

その後もリハビリを続けながら復帰を目指していましたが、2014年11月2日、交際相手である浅野ゆう子の自宅で再びくも膜下出血で倒れ、6日未明に47歳の若さで亡くなりました。

NHK土曜ドラマ『人生はフルコース』でのデビューから始まり、『功名が辻』、『水戸黄門』など、数多くの作品に出演。多様な役柄をこなす彼の演技は、経験に裏打ちされた深みと、父譲りの繊細さを持ち合わせていました。

俳優としての人生は短かったものの、その生涯は、父の影響を受けながらも、自らの意志で道を切り開いた、真摯な俳優としての軌跡として記憶に残ります。彼の存在は、演じることの真髄を常に追求した、唯一無二の俳優として、これからも語り継がれていくことでしょう。

主な出演作品

テレビドラマ：『人生はフルコース』、『功名が辻』、『孤独の賭け〜愛しき人よ〜』、『水戸黄門』、『七人の敵がいる! 〜ママたちのPTA奮闘記〜』など多数
映画：『カンナさん大成功です!』、『カムイ外伝』など
* ラジオドラマ：『青春アドベンチャー ウォーターマン』など

もう一度検索