田嶋恩

田嶋恩は、明治33年（1900年）10月12日に生を受け、昭和60年（1985年）4月23日に84歳でその生涯を閉じた、日本の著名な実業家です。現在の日本ファイリング株式会社の前身にあたる東京測器株式会社の創業者であり、初代社長として同社を率いました。また、小竹商店や湘南軌道でも取締役を務めるなど、多岐にわたる事業に携わりました。

田嶋恩は、実業家であった田嶋勝次郎の四男として、東京の豊島区に誕生しました。彼の祖父である宇太郎は、加賀国（現在の石川県）の出身で、江戸に出て東本願寺の寺侍として仕えた人物でした。田嶋恩自身は、早稲田工手学校（現在の早稲田大学芸術学校）にて建築や工学の基礎を学びました。

学業を終えた後、彼は様々な分野で実務経験を積んでいきます。東京建鉄では技師として専門知識を活かし、その後は大東工業の副社長、日本鋼鉄家具の常務、京浜鋼鉄工業の社長、清水建材興行の取締役など、多種多様な企業の要職を歴任しました。これらの経験を通じて、経営手腕や幅広い事業知識を磨き、実業界における確固たる地位を築いていきました。

昭和14年（1939年）12月23日、長年の経験と構想をもとに、自らの事業である東京測器株式会社を設立しました。彼は初代代表取締役社長として、会社の黎明期から発展期にかけて陣頭指揮を執り、事業の基盤を確立しました。東京測器は後に日本ファイリング株式会社へと発展し、現代に至るまでその事業は引き継がれています。

田嶋恩の事業における功績は、国家からも高く評価されました。昭和36年（1961年）には、文化や科学技術の発展に寄与した人物に贈られる紫綬褒章を受章しました。さらに、昭和45年（1970年）11月には、長年の公的な功労が認められ、勲四等に叙されるという栄誉に浴しました。

彼の家族構成もまた、現代の様々な分野と繋がりを持っています。兄である壹号氏は、日本遮光や東京建鉄で社長を務め、勲八等を受章した実業家でした。姉のしげ氏は、佐和正の五男である秀桂氏に嫁ぎました。妻の智恵氏は、日本女子商業学校を卒業しています。

子女にも恵まれました。長男の遠平氏と次男の譲二氏は、いずれも日本ファイリングの会長を務め、父の事業を受け継ぎ発展させました。長女の佳惠氏は、元郵政大臣である植竹春彦氏の長男、英雄氏（帝国造林会長）の妻となりました。次女の紗智氏、そして三女の美惠氏がいます。美惠氏は、後に芙蓉総合リースで代表社長を務めた伊藤新造氏の妻です。

孫世代にも、田嶋恩の血筋は引き継がれています。次男・譲二氏の長男である譲太郎氏は、現在、日本ファイリング株式会社の社長として、祖父が築いた会社の経営を担っています。また、三女・美惠氏の長女は、テレビタレントとして広く知られる、いとうあさこ氏です。このように、田嶋恩の系譜は実業界のみならず、多方面にわたる人材を輩出しています。

田嶋恩は、激動の昭和という時代を実業家として生き抜き、自らの事業を成功させ、その功績を国に認められました。彼の築いた会社は現代に続き、その家族構成は現代社会とも深く関わるものとなっています。

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