湘南軌道

湘南軌道：幻の軽便[[鉄道]]

湘南軌道は、かつて神奈川県に存在した軽便[[鉄道]]で、その運営会社でもありました。 主な目的は、秦野で産出された葉タバコを東海道線の二宮駅まで輸送することでした。大正時代には賑わいを見せていましたが、1921年の秦野自動車（現在の神奈川中央交通）の営業開始、関東大震災による被害、そして1927年の小田原急行鉄道（現在の小田急小田原線）の開通など、様々な要因が重なり衰退しました。その後、旅客営業を休止し、路線を休止、最終的には1937年に全線が廃止されました。

路線データ（廃止時点）

路線距離: 10.0km
軌間: 762mm
駅数: 8駅（起終点駅含む）
複線区間: なし（全線単線）
電化区間: なし（全線非電化）

歴史

1901年（明治34年）9月20日: 軌道特許状が下付されました。
1904年（明治37年）: 湘南馬車鉄道株式会社が設立されました。
1906年（明治39年）8月1日: 湘南馬車鉄道として秦野 - 二宮間が開業しました（9.0km）。開業当初は馬車鉄道でした。当時の発起人は、秦野市、二宮町、中井町などの沿線の有力者たちでした。発起人の中には、国会議員の伊達時や、慶應義塾出身で福沢諭吉の知己を得ていた山口喜十郎（旧姓 高橋）などがいました。伊達時と山口喜十郎は、伊勢原市にあった自由民権運動の団体「湘南社」にも深く関わっていました。
1913年（大正2年）
2月1日: 利用者の増加に伴い、蒸気機関車に変更されました。
2月24日: 湘南軽便[[鉄道]]に改称されました。
1918年（大正7年）: 経営難により一時休止しましたが、その後経営が移管され湘南軌道となりました。
1923年（大正12年）9月1日: 関東大震災により被災しました。
1924年（大正13年）3月: 秦野駅（初代）を台町駅に改称し、秦野（2代目） - 台町間が開業（1.0km）、全線が開通しました。
1927年（昭和2年）4月1日: 小田原急行鉄道が開通しました。
1929年（昭和4年）8月14日: 乗合自動車の運行を開始しました。
1933年（昭和8年）: 旅客営業を休止し、貨物営業のみとなりました。
1935年（昭和10年）10月9日: 秦野 - 二宮間の全線で営業を休止しました。
1937年（昭和12年）8月25日: 秦野 - 二宮間の全線が廃止されました。

車両

湘南軌道では、大日本軌道鉄工部製の独特な形状をした蒸気機関車が5両運用されていました。この機関車の特徴は、細い筒の上に火の粉の飛散を防ぐための太い罐が取り付けられた煙突でした。

車両数の変遷

1911年（明治44年）馬車鉄道時代
車両：38両
馬：29匹

駅一覧

廃止時点

秦野駅 - 台町駅 - 大竹駅 - 上井ノ口駅 - 下井ノ口駅 - 一色駅 - 中里駅 - 二宮駅

湘南軌道の秦野駅は、現在のイオン秦野店付近にあり、小田急秦野駅とは場所が異なっていました。秦野駅延伸の際、専売支局への引き込み線が敷設され、局内のトロッコ線と接続しました。専売公社の敷地内には、タバコ類の積み下ろし専用ホームがありました。

接続路線（廃止時点）

二宮駅：国鉄東海道本線
台町駅：小田原急行鉄道大秦野駅（徒歩8分）

輸送・収支実績

鉄道院年報、鉄道院鉄道統計資料、鉄道省鉄道統計資料、鉄道統計資料、鉄道統計各年度版に詳しいデータが掲載されています。

その他

会社設立当初の特許には、実際に開業した二宮 - 秦野間の他に、平塚町 - 厚木町、平塚町 - 秦野町の計3路線が含まれていましたが、申請により取り消されました。
小田原急行鉄道が開通した際、既に湘南軌道に秦野駅が存在していたため、小田急の駅は「大秦野駅」と名付けられました。この駅名は湘南軌道廃止後も続き、1987年に地元の要望で「秦野駅」に改称されるまで、半世紀にわたって秦野駅が存在しないという状態が続きました。
発起人の一人である山口喜十郎（旧姓 高橋）は、福沢諭吉の弟子であり、慶應義塾で福沢諭吉から直接学んだ人物でした。

脚注

注釈

出典

参考資料

今尾恵介（監修）『日本[[鉄道旅行地図帳]] - 全線・全駅・全廃線』 4 関東2、新潮社、2008年。ISBN 978-4-10-790022-7。
渡邊喜治『湘南軽便メモワール』（初版）東京図書出版、2012年5月28日 発行。ISBN 978-4-86223-561-9。

関連項目

廃線

外部リンク

* たばこが生んだ馬車鉄道 『たばこワールド』JT

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