田嶋隆純

田嶋 隆純（たじま りゅうじゅん）

田嶋隆純は1892年（明治25年）1月9日に栃木県で生まれ、1957年（昭和32年）7月24日に亡くなった日本の仏教学者です。彼は大正大学の教授として、また真言宗豊山派の大僧正として広く知られています。特に彼の業績は、チベット語に訳された仏教文献の精査と、チベット訳と漢訳の仏典を対照研究することにありました。これにより彼は学界での先駆者的存在となりました。

早年の教育とチベット語の習得

田嶋は13歳の時に栃木市の満福寺に入室し、仏教に親しむようになりました。彼の記憶力と知性は優れており、早くから経典の読誦や漢籍の素読を行っていました。14歳で得度した後、1911年には上京し護国寺の豊山中学に通いました。学業に励んだ彼は1919年に豊山大学を卒業し、さらには河口慧海に師事し、チベット語の学習を始めました。この学びは後の彼の研究に多大な影響を与えることとなります。

ソルボンヌ大学での留学

1931年、田嶋はフランスのソルボンヌ大学に留学し、チベット訳の『大日経』を中心に研究を続けました。この留学中、彼は多くの著名な学者との交流を深め、チベット語やその文学に関する知識をさらに深めました。1934年には、記念講演を土台に学位論文も執筆しました。

教誨師としての活動

戦後の日本で、田嶋は巣鴨拘置所の教誨師として活動を始めます。彼は、処刑される戦犯たちに対して理解と支援を提供し、BC級戦犯の助命減刑のために奔走しました。この活動は多くの人々から感謝され、彼は「巣鴨の父」と称されました。彼が編集に携わった『世紀の遺書』は、戦犯たちの心の叫びを集め、多くの共感を呼び起こしました。

文化的な功績

田嶋は、戦犯たちの思いを象徴する「愛の像」の建立にも携わりました。この像は東京駅前に建てられ、彼の言葉により「愛」の概念が広められました。

晩年と思い出

田嶋は1951年に健康を害し、その後は闘病生活を送りましたが、なおも彼の教えは多くの人々に影響を与え続けました。1957年に65歳で亡くなった際、葬儀には多くの人々が参列し、彼の存在がどれだけの人々に愛され、尊敬されていたかを物語っています。

交友関係と弟子たち

彼の周囲には多くの弟子たちが存在し、特に柴崎徳純や釈昭純らとの親交が知られています。田嶋の教えは、今もなお弟子たちに受け継がれています。

著作と伝記

田嶋は多くの著作を残しました。『蔵漢対訳 大日経住心品』や、後の『わがいのち果てる日に』は彼の業績の一部です。これらの著作は彼の思想と業績を後世に伝える大切な資料となっています。

田嶋隆純の生涯は、仏教の学問、教育、そして人間としての深い人間愛に満ちたものでした。彼の業績は今でも多くの人々に感動を与え、仏教の理解を深める手助けをしています。

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