河口慧海

河口慧海：日本人初のチベット探検僧

河口慧海（かわぐち えかい、1866年2月26日 - 1945年2月24日）は、明治から昭和にかけて活躍した黄檗宗の僧侶、仏教学者、そして探検家です。彼は日本人として初めてチベットへの入国に成功し、その体験を『西蔵旅行記』として著しました。彼の生涯は、仏教への深い探求心と、困難に立ち向かう不屈の精神に彩られています。

生い立ちと出家

河口慧海は、現在の大阪府堺市で生まれました。幼い頃から学問に励み、同志社英学校で学んだ後、哲学館（現在の東洋大学）で学びました。1890年に黄檗宗の五百羅漢寺で得度し、僧侶となりました。しかし、漢語仏典に対する疑問から、仏陀の本来の教えを求めて梵語やチベット語の仏典を探求することを決意します。

チベットへの道

鎖国状態にあったチベットへの入国は容易ではありませんでした。慧海は、日本人であることを隠し、中国人として行動することで入国を試みました。1897年に日本を出発し、インドを経由してチベットを目指します。ダージリンでチベット語を学び、ネパール経由でチベットへの潜入を試みました。数々の困難を乗り越え、1900年についにチベットへの入国を果たします。

ラサでの生活

慧海はラサに滞在中、セラ寺の大学に入学し、チベット仏教を学びました。また、医者としての才能を発揮し、「セライ・アムチー（セラの医者）」として民衆から慕われるようになりました。ダライ・ラマ13世にも謁見し、侍医に推薦されますが、仏道修行に専念するため断っています。ラサでの生活は、仏教の研究だけでなく、チベットの文化や社会に触れる貴重な機会となりました。

帰国とその後

1902年、慧海はラサを脱出し、インドを経て日本に帰国しました。帰国後、『西蔵旅行記』を出版し、その体験を広く伝えました。その後も、チベット語仏典の翻訳や研究、仏教に関する著作を続け、大正大学教授として後進の指導にもあたりました。晩年は在家仏教を提唱し、1945年に80歳で亡くなりました。

業績と影響

河口慧海の業績は、日本人として初めてチベットに入国し、その体験を記録したことです。彼の『西蔵旅行記』は、当時の日本人にチベットの文化や仏教を紹介し、チベットへの関心を高めるきっかけとなりました。また、チベット語仏典の翻訳や研究を通じて、日本の仏教学の発展にも貢献しました。彼の探求心と不屈の精神は、多くの人々に感銘を与え続けています。

著作一覧

• - 『西蔵旅行記』
• - 『在家仏教』
• - 『正真仏教』
• - 『西蔵伝印度仏教歴史』
• - 『梵蔵伝訳法華経』
• - 『漢蔵対訳勝鬘経』
• - 『蔵文和訳大日経』
• - 『西蔵文典』
• - 『西蔵語読本』

記念碑

• - 生家跡（大阪府堺市）
• - 七道駅前銅像
• - 終焉の地顕彰碑（東京都世田谷区）
• - 河口慧海師碑（九品仏浄真寺境内）
• - 供養塔（高野山奥の院）
• - 河口慧海訪問の記念碑（ネパール・カトマンズ）
• - 河口慧海記念館（ネパール・マルファ）
• - セラ寺記念碑（チベット）

河口慧海は、日本の仏教史における偉大な先駆者の一人です。彼の生涯は、仏教への情熱、異文化への理解、そして困難に立ち向かう勇気の象徴として、永く記憶されるでしょう。

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