田所哲太郎

田所哲太郎：農学と化学を繋いだ北海道の教育者

田所哲太郎(1885年9月27日-1980年3月20日)は、日本の農学と化学の発展に多大な貢献をした著名な学者です。秋田県能代市に生まれ、東北帝国大学農科大学(現在の北海道大学農学部)を卒業後、同大学で助手、助教授として研究活動に携わりました。1919年には農学博士号を取得し、1921年には北海道帝国大学教授に就任、さらに1928年には東北帝国大学より理学博士号を取得するなど、着実に研究者としての道を歩んでいきます。

彼の研究は、農学と化学の境界を軽々と越えるものでした。栄養化学、蛋白質化学、食品化学、そして酵素化学といった分野において、精力的に研究を進め、日本の生物化学の発展に大きく貢献しました。学位論文の題名である「生物化學上に於ける性的差異」からも、その研究領域の広さと深さがうかがえます。

研究活動と並行して、田所博士は教育者としても大きな足跡を残しました。1949年、北海道学芸大学の初代学長に就任。同時期には北海道第一師範学校校長も兼任するなど、北海道の教育行政に大きく貢献します。その後も、帯広畜産大学、北海道女子短期大学の学長を歴任し、それぞれの大学の設立と発展に尽力しました。これらの大学における指導と教育は、多くの後進の育成にも繋がったことは間違いありません。

1949年に北海道大学を停年退官後も、その精力的な活動は衰えることはありませんでした。北海道学芸大学、帯広畜産大学、北海道女子短期大学と、北海道の高等教育機関のトップとして、大学の設立と発展に貢献した功績は非常に大きいです。晩年は北海道女子短期大学を退職するまで、教育者として精力的に活動しました。

田所博士の業績は、学術的な貢献だけにとどまりません。彼は実業家の山下太郎氏と親交があったことからもわかるように、社会との繋がりを重視し、学問と社会との接点を大切にしていました。その姿勢は、彼の著作にも反映されています。『酵素化學』、『食品化學』、『榮養化學』など、数々の著書は、今日でも高い評価を受けており、後世への貴重な遺産となっています。他にも『主食イモの化學と其利用』、『現代科学と技術教育』、『酪農製品:読本』、『酪農化学シリーズ全10巻』など、多岐にわたる分野の著作を出版しています。

彼の功績は高く評価され、1965年には勲二等旭日重光章、1966年には北海道文化賞、1973年には北海道開発功労賞・北海道功労賞を受賞しました。これらの受賞歴は、彼が北海道の教育と社会発展に貢献したことを示す、輝かしい証です。

1980年に逝去。没後、正三位に叙せられました。田所哲太郎博士は、研究者、教育者として、そして北海道の発展に貢献した人物として、その功績は永遠に記憶されるでしょう。彼の生涯は、学問への飽くなき探究心と、教育への熱い情熱、そして社会への貢献を体現した、まさに模範的な人生と言えるでしょう。

もう一度検索