田本憲吾

田本憲吾：帯広の発展に尽くした市長

田本憲吾（たもと けんご、1929年6月8日 - 2023年4月1日）は、日本の政治家であり、北海道帯広市長を4期にわたり務めました。中川一郎農林水産大臣の薫陶を受け、その直系市長として、帯広市の発展に大きく貢献しました。

生涯

1929年、樺太庁本斗郡内幌町に生まれた田本は、豊原工業学校在学中に終戦を迎え、1947年に樺太から引き揚げました。その後、日本大学旧工学部土木工学科を卒業し、大豊建設に入社。1955年に退社し、帯広へと帰郷しました。帰郷後は家業の食堂経営に携わる傍ら、1970年から帯広市都市計画委員、1971年からは同委員長を務め、都市計画に貢献。また、1971年から1期、帯広市教育委員会委員も務めました。

1974年、田本は帯広市長選挙に無所属で出馬し、中川一郎衆議院議員の支援を受け、初当選。第6代帯広市長に就任しました。

市長としての功績

市長就任後、田本はオイルショック後の物価高騰による市の財政逼迫に対応するため、経常経費の節減や財源の確保に尽力。その一方で、市民生活安定のための対策本部を設置し、南町中学校の新設や小学校の増設、小中学校の屋内運動場建設、保育所や児童保育センターの新設、帯広空港の移転造成、市立病院建設、駅南土地区画整理事業、刑務所建築交換及び跡地造成事業など、多岐にわたる事業を推進しました。

特に、帯広空港の建設においては、当初、騒音問題や用地確保の難しさから反対の声も上がりましたが、田本は関係部署を陣頭指揮し、地域住民との粘り強い交渉を重ね、1981年の開港へと導きました。この空港は、帯広市の経済発展に大きく貢献することとなりました。

その他、第三期総合計画、商業近代化基本構想、新農村地域再開発計画を策定し、地域集会所の開設や小中学校の改築、静岡県松崎町との「開拓姉妹都市」の調印など、様々な施策を展開しました。

帯広開基100年と市制施行50年を記念した事業では、百年記念館の建設、市民憲章の制定、十勝博覧会「グリンピア82」の開催などを行い、市民の郷土愛を育みました。また、徳島市と「産業文化姉妹都市」を締結し、交流を深めました。住宅対策として柏林台団地市営住宅の立替高層化事業や西帯広ニュータウンの開発を支援し、教育環境の整備として北海道帯広南商業高等学校のニュータウン内への移転や北海道帯広緑陽高等学校の新設にも尽力しました。さらに、鉄道高架事業を推進し、水需要の増加に対応するため周辺町村と共同で十勝中部広域水道企業団を結成し、札内川ダムの建設に取り組みました。

田本は4期16年にわたり帯広市長を務め、帯広市の発展に大きく貢献しましたが、1990年の市長選挙で落選し、退任しました。

退任後

退任後は、帯広ステーションビル社長や帯広福祉協会理事長などを務め、地域社会に貢献しました。2005年には旭日小綬章を受章。2016年には、市長時代の思い出や中川一郎とのエピソードをまとめた回顧録「柏州夢想」を自費出版しました。

晩年は病院で緩和ケアを受けながらも、帯広市のまちづくりについて語るなど、生涯にわたり帯広市の発展を願っていました。2023年4月1日、肺癌のため帯広市内の病院で死去。93歳でした。

田本の死後、正五位が追贈され、告別式には多くの関係者が参列し、その功績を偲びました。帯広市では、田本の「お別れ会」が開かれ、メモリアル展が開催されました。

田本憲吾は、帯広市の発展に生涯を捧げた政治家として、その名は永く記憶されることでしょう。

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