田村克己

田村 克己

田村 克己（たむら かつみ、1949年 - ）は、日本の文化人類学者。東南アジア、とりわけミャンマー地域に焦点を当て、社会構造、歴史、文化変容などを多角的に研究してきた第一人者である。

略歴

1949年、兵庫県神戸市の長田区で生を受ける。東京大学大学院社会科学研究科に進み、文化人類学専攻で修士課程を修了し、専門分野の研究基盤を築いた。

学術研究者としてのキャリアは、鹿児島大学教養学部で助手を務めることから始まる。その後、同大学で講師、助教授と昇進し、教育・研究経験を積む。次いで、金沢大学文学部助教授として活動の場を移す。

1989年には、国立民族学博物館研究部助教授に着任。国内外の多様な文化に関する総合的な研究機関である同博物館で、自身の専門性を深めていく。1999年には教授に昇任し、研究活動をさらに推進した。2005年から2011年3月までの期間は、副館長として博物館の運営にも携わる。組織再編に伴い民族社会研究部教授を経て、2014年3月末をもって定年退職。長年の功績が認められ、国立民族学博物館名誉教授の称号を授与された。

研究分野と貢献

田村氏の専門は東南アジア文化人類学であり、特にミャンマーを主要なフィールドとしてきた。ビルマ（ミャンマー）の王権システム、近代化に伴う社会・政治構造の変化、人々の暮らしや文化の変容など、幅広いテーマに取り組んでいる。長年にわたる現地調査に基づいた研究成果は、ミャンマー理解を深める上で貴重な知見を提供している。国立民族学博物館での活動を通じて、研究成果の発信や後進の育成にも尽力した。

主な業績

田村氏は、その研究成果を多くの著作として発表している。単著のほか、共同での編著や翻訳も多数手掛けており、その著作活動は多岐にわたる。

著書
『レッスンなきシナリオ：ビルマの王権、ミャンマーの政治』（風響社、2014年）
ビルマ王朝時代の王権の特質から現代ミャンマーの政治状況までを人類学的な視点から論じた単著。

共編著
『ビルマ』（暮らしがわかるアジア読本）根本敬と共編（河出書房新社、1997年）
ミャンマーの社会や文化、人々の暮らしを紹介する入門書。
『文化の生産』（二〇世紀における諸民族文化の伝統と変容 4）（ドメス出版、1999年）
20世紀における文化の創造や変容プロセスを探る論集の一部。
『ミャンマーを知るための60章』松田正彦と共編著（明石書店、2013年）
多角的な視点からミャンマーを解説するハンドブック。
『転換期のミャンマーを生きる：「統制」と公共性の人類』土佐桂子と共編（風響社、2020年）
政治的・社会的な転換期にあるミャンマーの人々の生活や公共空間のあり方を分析した最新の共編著。

訳書
『中国の宗族と社会』モーリス・フリードマン著、瀬川昌久と共訳（弘文堂、1987年）
* 著名な人類学者モーリス・フリードマンによる中国社会研究の古典を日本語に翻訳したもの。

これらの著作は、研究者のみならず、広くミャンマーに関心を持つ読者にとっても重要な資料となっている。

長年にわたる教育・研究活動、特にミャンマーを対象とした深い洞察は、東南アジア研究、文化人類学の発展に大きく貢献している。

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