田村実造

田村実造：東洋史研究の巨星

田村実造（1904年5月25日-1999年2月24日）は、20世紀を代表する日本の東洋史学者の一人です。京都大学名誉教授、京都女子大学学長という輝かしい経歴を持ち、その研究活動は幅広く、多大な影響を与えました。本稿では、田村実造氏の生涯と業績について、詳細に見ていきましょう。

山口県に生まれた田村氏は、1929年に京都帝国大学文学部史学科を卒業後、1940年に同大学助教授に就任。1947年には教授に昇進し、文学部長も務めました。1968年に京都大学を定年退官した後も、京都女子大学学長として教育界にも貢献しています。

田村氏の研究は、中国史、特に北方民族史に深く関わるものでした。1930年代には、中国東北部で精力的な現地調査を実施。契丹・遼代の遺跡や墳墓の発掘調査を行い、その成果は、当時の学界に大きな衝撃を与えました。中でも特筆すべきは、契丹文字を学会に初めて紹介した功績です。この発見は、北方民族の歴史研究に新たな地平を開いたと言えるでしょう。

その研究成果は数々の著作に結実しています。代表的な著書として『中国征服王朝の研究』三巻は、中国の歴史を新たな視点から解き明かした画期的な作品であり、現在でも東洋史研究の基礎文献として高い評価を得ています。その他にも、『世界史からみた新東洋史』や『中国史上の民族移動期 五胡・北魏時代の政治と社会』など、多くの著作を発表し、日本の東洋史研究に多大な貢献を果たしました。また、東洋史の教科書作成にも積極的に参加し、後進の育成にも力を注いでいました。

学術的な業績だけでなく、教育者としても優れた手腕を発揮しました。京都大学、京都女子大学において、多くの学生を指導し、彼らを育成しました。その温厚な人柄と深い知識は、学生たちから絶大な信頼を得ていました。

田村氏の功績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。1953年には朝日文化賞、1954年には日本学士院賞恩賜賞を受賞。1974年には勲二等瑞宝章を受章するなど、その研究活動と教育活動は社会に広く認められました。

晩年まで精力的に研究と執筆を続け、1999年に逝去。その死は、日本の東洋史研究界にとって大きな損失となりました。しかし、彼の残した著作と研究成果は、未来の研究者たちにとって貴重な財産であり、これからも東洋史研究の発展に貢献し続けるでしょう。

主な著作一覧：

『世界史からみた新東洋史』(文英堂 1950)
『中国征服王朝の研究』(東洋史研究会：同朋舎出版 1964、1974、1985)
『慶陵の壁画 絵画・彫飾・陶磁』(同朋舎 1977)
『中国史上の民族移動期 五胡・北魏時代の政治と社会』(創文社 1985)
『歎異抄を読む』(日本放送出版協会 1987)
『アジア史を考える アジア史を構成する四つの歴史世界』(中央公論社 1990)
『中国史にみる女性群像』(清水書院 1990)
『慶陵調査紀行』(平凡社 1994)

田村実造氏の業績は、単なる学問的成果にとどまりません。それは、時代を超えて人々に歴史への理解を深めさせ、未来への洞察を与える、まさに不朽の遺産と言えるでしょう。彼の貢献は、これからも日本の東洋史研究を照らし続け、多くの研究者たちにインスピレーションを与え続けることでしょう。

もう一度検索