田村遺跡群

田村遺跡群の概要

田村遺跡群は、高知県南国市田村に位置し、弥生時代の集落遺跡として全国的に有名です。歴史的には史跡指定は受けていませんが、その規模と出土品から、特に注目されています。1955年に郷土史家の浜田春水が、水田で散見された弥生時代前期の土器片を最初に発見し、その名称を「西見当遺跡」と名付けました。当初はわずかに水田数枚分の範囲にしか過ぎませんでしたが、その後、高知県教育委員会の発掘調査により、弥生前期中葉の土器が見つかり、この土器は「西見当式土器」と名づけられました。

その後も継続的に調査が行われ、環濠の一部が発見され、この遺跡が全国でも数少ない弥生前期の環濠集落であることが明らかとなりました。さらに、周辺での造成工事中に多くの土器が発見され、遺跡の範囲は拡大し、名称も「田村遺跡」に改名されました。1980年から1983年にかけて行われた第1次発掘調査、1996年から1999年にかけての第2次発掘調査により、縄文時代から近代までの複合的な遺跡であることが判明しました。この中でも特に弥生時代の規模が際立っており、調査された中でも日本最大級とされています。

遺構と出土品

田村遺跡群では、約2000年前の弥生時代中期後半から、約100年間にわたる竪穴建物や掘立柱建物などの遺構が見つかっています。合計で約850棟の建物遺構が確認され、その中には450棟の竪穴建物と400棟の掘立柱建物が含まれています。このことから、当時の集落は非常に大規模であり、研究者の間では「1000人規模の弥生都市であった」との見解も存在します。

遺跡からは三重の環濠や膨大な弥生土器、ガラス玉、環状石斧、銅鏡片、神殿に関連すると思われる建物が描かれた土器、さらには人面獣身の土偶などが見つかっています。特に北部九州よりも古い弥生土器が発見されていることから、当時の集落は早くから発展していたことが伺えます。

交流の痕跡

出土した土器や遺構の年代からは、弥生時代中期末の紀元前1世紀にピークを迎えたことが示されています。調査区の東半では、概ね全域にわたって遺構が見つかっており、特に調査の西端部にあたるⅠ区では後期の竪穴建物跡が出土しています。この遺跡からは、多数の地元産の土器の中に遠く近畿地方の産土器も含まれており、異地域との交流があったことがうかがえます。

調査の結果、遺構は中期の中頃から中期末の大集落に発展し、その後急激に減少し、終末期には周辺にわずかな建物が存在するだけとなったことがわかりました。紀元前1世紀にピークを迎えた後、紀元2世紀頃には急激な縮小が起こり、この現象は邪馬台国が記録された魏志倭人伝の時代に合わせて、集落に変化があったことを示唆しています。これにより、当時の社会情勢がどのように集落の発展や衰退に影響を与えたのか、考察する重要な遺跡であると言えるでしょう。

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