田畑精一

田畑精一：人形劇から絵本へ、そして児童文学への貢献

田畑精一(1931年3月30日-2020年6月7日)は、日本の絵本作家、挿絵画家として知られています。大阪に生まれ、芦屋市で育った彼は、高校時代は美術部に所属し部長を務めるなど、幼い頃から芸術的な才能を示していました。

進学した京都大学理学部では原子物理学を専攻しましたが、朝鮮戦争勃発を機に原子物理学への疑問を抱き、大学を中退。その後、人形劇団プーク、人形座に参加し、約10年間、主に美術を担当しました。人形座での経験は、後の絵本制作に大きな影響を与えたと考えられます。

人形座解散後、田畑は絵本の世界へと進みます。転機となったのは、近所に越してきた作家、古田足日との出会いでした。古田との親交を深め、彼の作品に挿絵を描くことからキャリアをスタートさせます。

代表作の一つである『おしいれのぼうけん』(共作)は、1974年の初版以来、2007年9月までに推定180万部を売り上げ、2024年時点では250万部を超えるベストセラーとなりました。この絵本は、子供たちの豊かな想像力を刺激する、数多くの作品の中でも特に記憶に残る作品です。

また、先天性の障害を持つ女の子とその周囲を描いた『さっちゃんのまほうのて』は、「先天性四肢障害児父母の会」からの依頼で制作され、赤い靴児童文化大賞を受賞。1985年の初版以来、2010年までに65万部を売り上げるロングセラーとなりました。この作品は、障害を持つ子供たちへの理解を深める上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

挿絵画家としても、田畑は多くの作家作品に携わっています。古田足日の作品だけでなく、神沢利子、後藤竜二など、様々な作家の作品に挿絵を提供し、それぞれの作品の世界観を効果的に表現することに貢献しました。その幅広い活動は、児童文学の発展に大きく寄与したと言えるでしょう。

さらに、1984年から1985年にかけては日本児童出版美術家連盟理事長を務めるなど、業界でも指導的な立場を担っていました。 また、「子どもの本・九条の会」代表団員も務め、社会的な活動にも積極的に参加していました。

2020年6月7日、老衰のため89歳で逝去しました。妻は人形作家の保坂純子（2018年没）です。古田足日との家族ぐるみの交流もあったとされ、その温かい人柄が、多くの人々から慕われた理由の一つと言えるでしょう。

田畑精一は、人形劇、挿絵、絵本制作と、多岐にわたる活動を通して、子供たちに夢と感動を与え続けました。彼の作品は、これからも多くの子供たちの心を豊かにし続けることでしょう。彼の功績は、児童文学史に大きな足跡として刻まれています。

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