由比質

由比 質（ゆひ ただす）は、明治3年11月20日（新暦1871年1月10日）に生を受け、昭和5年（1930年）4月7日に生涯を終えた、日本の近代教育を支えた一人です。その功績により、従三位勲二等の栄誉が贈られています。

郷里は高知県土佐郡神田村、現在の高知市にあたります。若くして向上心に燃え、第三高等学校で研鑽を積んだ後、明治29年（1896年）に東京帝国大学文科大学史学科の課程を修了しました。大学で歴史学を深く学んだ知識と教養を基に、教育者の道を歩み始めます。

教育者としてのキャリアは多岐にわたりました。まず、山口高等学校に奉職し、教授として教鞭を執ると同時に舎監として生徒たちの生活指導にもあたりました。その後、千葉県千葉中学校の校長として学校運営の指揮を執り、教育方針の確立に尽力しました。さらに、第五高等学校では再び教授として教壇に立ち、生徒監として生徒指導の中核を担いました。その後、母校の一つである第三高等学校に戻り、教授として教育活動を続けました。教育界での実績を重ねるにつれて、その手腕が認められ、松山高等学校の校長に就任し、次いで第七高等学校造士館の校長として、高等教育機関の運営と発展に力を注ぎました。

各地の高等学校や中学校で、教授や校長、舎監、生徒監といった様々な役職を歴任する中で、由比質は多くの学生たちの育成に携わりました。歴史学者としての深い学識と、教育者としての熱意をもって、将来を担う若者たちの人格形成と学力向上に貢献したのです。

昭和5年（1930年）、第七高等学校造士館の校長を務めていた由比質は、鹿児島市で講演を行っている最中に突然、脳溢血により倒れました。そのまま帰らぬ人となり、59歳という比較的若い年齢でこの世を去るという、痛ましい最期でした。その突然の訃報は、教育界に大きな衝撃を与えました。

由比質の墓は、東京都豊島区にある染井霊園に設けられています。墓所は1-イ-4-19番に位置しており、同じ区画には、陸軍大将として知られる彼の兄、由比光衛の墓もあります。兄の墓石の右手に、由比質の墓石が静かに佇んでいます。

教育者として全国各地の学校で活躍した由比質は、兄に由比光衛という傑出した軍人を持つ家庭に育ちました。兄弟それぞれが異なる分野で日本の近代化に貢献したと言えるでしょう。

由比質の功績については、「故第七高等学校造士館長由比質叙勲ノ件」（アジア歴史資料センター所蔵、Ref.A10113068800）などの資料からその一端を知ることができます。

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