甲府市の歌

甲府市の歌

山梨県の県庁所在地である甲府市には、市によって定められた歌が存在します。現在歌われている「甲府市の歌」（こうふしのうた）は、1966年（昭和41年）に制定された、三代目の市歌にあたります。この歌は、作詞を輿石保之氏が、作曲を中島睦明氏が手がけ、歌詞は甲府市の歌審査委員会によって補作されました。

制定までの歩み

実は、甲府市には過去にも二つの市歌がありました。初代は1928年（昭和3年）10月制定の「甲府市歌」で、作詞を中田千寿代氏、作曲を坂口五郎氏が手がけました。次いで、1946年（昭和21年）頃には二代目の「甲府市民歌」が生まれたとされています。こちらは本間一咲氏が作詞し、井上武士氏が作曲しました。しかし、1954年（昭和29年）に周辺の10村を編入合併し市域が拡大したことにより、新たな時代の市にふさわしい歌を求める機運が高まりました。

市は、この高まりを受け、1966年（昭和41年）の市制施行77周年という節目に合わせて、市民憲章とともに新しい市歌を制定することを決めました。新しい市歌の歌詞は広く市民から懸賞募集され、多くの応募作品の中から輿石保之氏の詩が選ばれました。輿石氏は当時、山梨県警の巡査であり、その才能は京都府警察歌や神奈川県警察学校、山梨県消防学校の校歌なども手がけるほどでした。公募で選ばれた歌詞は、市の歌審査委員会によって丁寧に補作が行われ、公式な歌詞として完成しました。

発表と普及活動

新しい市歌「甲府市の歌」は、1966年10月17日に甲府商業高校の講堂で開かれた市制77周年記念式典で初めて市民に披露されました。この式典では、市民憲章の発表とともに、市歌の発表演奏が行われました。

市歌の普及を図るため、地元の山梨中央銀行から2万枚のソノシート（レコード盤の一種）が市に寄贈され、当時の甲府市内の全世帯に配布されました。これにより、多くの市民が家庭で手軽に市歌に触れる機会が生まれました。

現在の利用

制定から長い年月が経ちましたが、「甲府市の歌」は現在も甲府市民に親しまれています。特に、2019年（令和元年）10月17日からは、甲府市制130周年を記念して、防災無線による17時の時報として利用されるようになりました。それまで時報に使われていた唱歌「故郷」に代わり、「甲府市の歌」が採用されたのです。これにより、夕刻に市内各地で市歌が流れ、市民の日常生活に溶け込む形で歌い継がれています。

まとめ

「甲府市の歌」は、甲府市の歴史と市民の想いを反映した歌です。二つの旧市歌を経て、市域拡大という変化の中で生まれ、市民参加の歌詞募集を経て制定されました。発表時のソノシート配布や、現在の防災無線での時報利用など、様々な形で市民に寄り添い、甲府市の象徴として歌い継がれています。この歌は、甲府市の過去、現在、そして未来をつなぐ大切な存在と言えるでしょう。

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