甲賀真理子

甲賀 真理子（こうが まりこ）は、1949年7月30日に広島県豊田郡安浦町（現在の呉市）に生まれた、日本のファッションデザイナーです。独創的かつエレガントなデザインで知られ、長年にわたり日本のファッション業界を牽引してきた重要人物の一人です。

地元の広島県立呉三津田高校を卒業後、東京学芸大学に進学しましたが、やがてファッションの道へと進むことを決意し中退。服飾の専門教育を受けるため文化服装学院に入学し、1973年に卒業しました。翌1974年には、当時日本のファッションシーンを牽引していた株式会社ニコルに入社し、デザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。ニコルでは、自身の名を冠した「ZELDA」ブランドのチーフデザイナーに1979年に就任。年に二度、自身の世界観を表現するコレクションを発表するようになり、その才能が広く注目されるようになりました。1986年には、同社の取締役に就任し、デザイナーとしてだけでなく経営にも携わる立場となります。1989年には、「ZELDA」を「MARIKO KOUGA」へと改称し、さらにモード色の強いラインとして「マリコ・コウガ・アール」を発表するなど、ブランドを精力的に展開しました。

1998年、長年勤めたニコルを離れ、自らの名を冠した株式会社マリコ・コウガを設立し、独立を果たします。独立後もその活動の幅は広く、自身のブランドラインを展開する一方で、多岐にわたる外部プロジェクトに参画しました。例えば、ブラックフォーマルなどで知られるソワール社とは「MARIKO KOUGA Fil Dore」ラインを、ワールド社とは「LAMiAViTA」ラインを手掛けるなど、他社との協業やライセンス事業において中心的な役割を果たしました。

また、甲賀真理子は自身の創作活動にとどまらず、日本のファッション界全体の発展にも貢献しています。東京ファッションデザイナー協議会の一員として、若い才能の発掘や育成にも積極的に取り組み、次世代のクリエイターが活躍できる環境づくりを支援しています。

彼女のキャリアにおいて特に知られるエピソードの一つに、歌手・中森明菜氏への衣装提供があります。1988年11月1日にリリースされた中森氏のシングル曲『I MISSED "THE SHOCK"』の衣装を手がけたものです。この衣装は元々、大手百貨店である伊勢丹の広告のために甲賀氏がデザインしたドレスでした。その広告写真を目にした中森氏が、ドレスの持つ独特の雰囲気に強く惹かれ、「新曲のテレビ出演用衣装として提供してほしい」と、甲賀氏に直接依頼を持ちかけました。当初、甲賀氏は広告用のデザインであったことから、そのまま衣装として提供することに難色を示したと言われています。しかし、中森氏の熱意ある直談判とその誠実な姿勢に心を動かされ、最終的に快諾。その後、甲賀氏は同曲のために、元のドレスと同じテイストでありながら、ステージパフォーマンスに適した複数の衣装を新たに制作しました。これらの衣装は、同曲のテレビ出演時などに使用され、中森氏のカリスマ的な存在感と相まって、多くの視聴者に鮮烈な印象を残しました。このエピソードは、甲賀真理子のデザインが持つ吸引力と、それを巡る人間ドラマとして語り継がれています。

このように、甲賀真理子はニコルでのデザイナーとしての確立期から、独立後の多角的な活動、そしてファッション業界への貢献に至るまで、そのキャリアを通じて常に日本のファッションシーンをリードしてきました。特にエレガントな中に強さを秘めたデザインは、多くの人々に愛され続けています。

外部リンク

甲賀真理子の世界観に触れることができる公式サイトも開設されています。

『Mariko Kohga』 公式ウェブサイト

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