申淑子

申淑子の生涯と北朝鮮での運命

申淑子（シン・スクチャ、1942年生まれ）は、全ての希望と自由を奪われ、北朝鮮の強制収容所に収容された韓国出身の女性です。彼女の運命は、夫となる呉吉男（オ・ギルラム）が北朝鮮からデンマークへ亡命した後、娘たちと共に耀徳強制収容所に送られることで大きく変わりました。この出来事は、アムネスティ・インターナショナルが彼女を「良心の囚人」と呼ぶきっかけとなり、国際的な注目を集めることになりました。

生い立ちと結婚

1942年、申は韓国の慶尚南道統営で生まれました。彼女は地元の学校で教育を受けた後、1958年から馬山市の看護学校で学びました。看護師となった後、申は1970年に韓国を出て、ドイツで働き始めます。テュービンゲンで経済学を学ぶ学生の呉吉男と出会い、1972年に結婚。2人はキール近くのクロンスハーゲンに移り、1976年と1978年に二人の娘、呉恵媛（オ・ヘウォン）と呉圭媛（オ・ギュウォン）を授かりました。家族は、1985年までこの地で生活を続けました。

北朝鮮への移動

呉吉男は1980年代初頭から政治活動に関わるようになり、北朝鮮政府からの誘いを受けることになります。政府関係者は、彼に経済学者として北朝鮮で貢献するよう勧め、申はこれに反対しましたが、1985年12月8日に家族は北朝鮮に到着してしまいました。

彼らは治療を受ける約束をしていたはずが、着いた先で軍への拘束や、金日成の思想を強制的に学ぶことになりました。呉はここで、北朝鮮による韓国人拉致の被害者とも出会うことになったのです。後に東ドイツからの亡命を果たすために、呉は家族と引き離され、ドイツに戻ることになります。

呉吉男の亡命と申の収容

1986年、呉吉男はデンマークで政治亡命を申請。その後、北朝鮮は申とその2人の娘を耀徳強制収容所に送ったのです。アムネスティ・インターナショナルは、申と彼女の娘たちが呉の亡命によって拘束されたと認識し、彼らを解放するための運動を開始しました。申は何度か自殺を試みましたが、その時点でも生存していたとの証言も残されています。

国際的運動と情報の流れ

1993年、アムネスティ・インターナショナルが申の解放を求める運動を展開し、韓国の人権活動家たちも「統営の娘救出運動」を始めました。これにより、韓国及び海外で70,000以上の署名が集まりました。2011年、韓国の情報機関が彼女たちの所在を調査しているとの報道もあり、健康状態についての情報も流れました。

2012年、北朝鮮は申淑子が肝炎で死亡したと国連に報告しましたが、この内容については疑念がもたれています。国際連合人権高等弁務官事務所は、申が依然として北朝鮮に拘束されていると強調し、即時釈放を求める意見書をつくりました。申の運命は、多くの人々の心の中に長く記憶され、北朝鮮における人権問題の象徴的な存在となっています。

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