馬山市

馬山市の歴史と地理：韓国経済発展を牽引した港湾都市

慶尚南道南部に位置していた馬山市は、鎮海湾の奥部に広がる港湾都市として、古くから栄えてきました。かつては独立した市でしたが、2010年7月、昌原市に編入され、現在は昌原市の馬山合浦区と馬山会原区として存在しています。本稿では、馬山市の歴史、地理、文化、そして昌原市との合併に至るまでの過程を詳細に解説します。

古代から近世までの馬山

古代、馬山は伽耶の領域に属し、「骨浦（コルポ）」と呼ばれていました。統一新羅時代には合浦県と改称され、義安郡の属県となりました。この合浦は、元寇において日本侵攻の基地として重要な役割を果たしたことで知られています。1274年の文永の役、1281年の弘安の役では、数万規模の蒙古・漢軍と高麗軍が合浦から出航し、日本に侵攻しました。

その後、1282年には会原県と改称され、金州に属する郡県の一つとなりました。李氏朝鮮時代には、1408年に会原県と義昌県（義安県から改称）が統合され、昌原府が設置されました。朝鮮時代を通じて、馬山浦は昌原府の一部として発展を続けました。

近代化と開港

19世紀末、日露両国の覇権争いの舞台となった馬山は、1899年にロシアによる単独租界設置を巡る馬山浦事件を経て、朝鮮半島第五の開港地となりました。日本人租界のほか、日露戦争まではロシア租界も存在していました。1910年には昌原府が馬山府と改称され、1914年には開港地付近を管轄する馬山府が設置され、商業の中心地として発展を遂げました。

20世紀の激動と発展

1949年、馬山府は馬山市と改称されました。朝鮮戦争（1950年～1952年）では、韓国軍や韓国警察による民間人虐殺事件（保導連盟事件）が発生しました。また、1960年3月には李承晩政権の不正選挙を糾弾するデモ（3.15義挙）が起き、多数の死傷者が出ました。特に馬山事件として知られる高校生の遺体発見は、4月19日の学生革命の引き金となりました。

1970年には、朴正熙政権が輸出振興政策の一環として馬山自由貿易地域を設定。外国企業誘致に成功し、韓国経済の発展に大きく貢献しました。その後、中国の経済特区は、この馬山自由貿易地域を参考にしたとされています。1973年には、隣接する昌原郡の一部を編入し、大規模な計画都市である昌原新都市の建設が進められました。1980年には昌原市が分離しました。

馬山市は、1995年には隣接する義昌郡の一部を合併し、都農複合形態市となりました。2005年には、島根県議会の竹島の日制定に反発し、「対馬の日」条例を制定しましたが、韓国政府から撤回要請を受けました。

昌原市への編入

2010年7月1日、馬山市は昌原市と鎮海市と合併し、昌原市の一部となりました。旧馬山市の区域は、馬山合浦区と馬山会原区に改編されました。

馬山市の地理と気候

馬山市は、鎮海湾の最奥部に位置し、西南には固城郡、西には晋州市、北には咸安郡と接していました。南と東は海に面しています。鎮海湾の入り江は「馬山湾」とも呼ばれていました。

馬山市の気候は、最高気温39.0℃（1994年7月20日）、最低気温-11.3℃（1991年2月23日）を記録しています。

馬山市の文化と教育

馬山市には市立博物館や文信美術館などの文化施設がありました。教育機関としては、慶南大学校や馬山専門大学などがあります。また、馬山女子高校と玉名女子高等学校（日本）、馬山合浦高等学校と兵庫県立大学附属中学校・高等学校（日本）は姉妹校関係を結んでいました。

交通

馬山市は、金海国際空港から43キロの距離に位置しています。鉄道は韓国鉄道慶全線の馬山駅と中里駅が主要な駅でした。高速道路は、南海高速道路第一支線と中部内陸高速道路が通っていました。

まとめ

馬山市は、歴史と発展の両面において、韓国経済に重要な役割を果たした港湾都市でした。開港場としての発展、自由貿易地域設定による経済効果、そして民主化運動など、激動の時代を背景に、その歴史は現代韓国を知る上で重要な鍵となっています。昌原市への編入後も、その歴史と文化は受け継がれ、新たな発展を遂げていると言えるでしょう。

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