男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』

『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』は、1980年8月2日に公開された映画で、日本の名作映画シリーズ『男はつらいよ』の第25作品です。この作品は、特に人気の高いリリー三部作の完結篇として位置づけられています。

この映画の魅力の一つは、マドンナを演じた浅丘ルリ子が松岡リリー役で登場する点です。彼女はすでに第11作『寅次郎忘れな草』、第15作『寅次郎相合い傘』にも出演しており、観客に親しまれています。本作は206万3千人の観客を動員し、上映と同時に『思えば遠くへ来たもんだ』が公開されました。2006年にNHK-BS2で行われた人気投票では、後半の24作品中のベスト1に選ばれるなど、その人気が伺えます。

あらすじ

物語は、寅次郎が旅先で夢を見ることから始まります。夢の中で、彼は「鼠小僧寅吉」となり、貧しい夫婦に小判を分け与え、追っ手から逃げるというストーリーが描かれます。ある日、博が小岩でリリーと偶然出会います。リリーは旅をしながらさまざまな場所で歌い続けていますが、彼女は寅次郎ととらやの人たちに会いたがっています。

物語が進む中で、寅次郎が柴又に戻ると、偶然にもとらや一家はピクニックに出かけようとしていました。寅次郎は機嫌を損ねてしまい、彼と家族との間に大喧嘩が勃発します。その後、リリーからの手紙が届き、彼女が沖縄で病気にかかり入院していることが明らかになります。手紙の最後には、彼女が『もう一度寅さんに会いたかった』と書かれています。驚いた寅次郎は沖縄へ向かうことを決心しますが、飛行機が怖い彼は一悶着の末、何とか搭乗し沖縄に到着します。

沖縄で再会した二人は涙を流して喜び、やがてリリーの状態は良くなっていきます。退院後、漁師町で一緒に生活を始めることになりますが、それは心が通じ合った穏やかなものです。しかしながら、寅次郎は地元の娘と楽しむこともあり、二人の関係には微妙な緊張が生まれます。この状況が原因で大喧嘩になり、リリーは沖縄を去ることに。

寅次郎は大慌てで彼女を追いかけますが、途中で体調を崩し、柴又に帰る頃には行き倒れてしまいます。回復後、周囲の人々はリリーの気持ちを理解し、寅次郎に結婚を急かします。数日後、リリーが訪れた際、二人は久しぶりの再会を果たし、心温まる会話を交わします。しかし、プライドや体裁が邪魔をし、結局お互いの気持ちを素直に伝えられないまま、柴又駅で別れることに。しかしその別れには、また会うことを期待させる爽やかさがありました。

最終場面では、旅先で偶然出会う形になり、再び二人がバスに乗ることを選びます。これにより、彼らの関係は希望のある終わり方を迎え、ラブストーリーとしてもバディムービーとしても心に残る作品となりました。

スタッフ＆キャスト

この作品は、山田洋次監督の手によって制作され、脚本も彼が担当しています。音楽は山本直純。主演の渥美清を始めとしたキャストには倍賞千恵子、下條正巳、前田吟などが揃っています。リリー役の浅丘ルリ子がその存在感で物語を彩り、見事な演技を見せています。

映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』は、観客の心を掴む心温まるエピソードと、登場人物たちの人間関係の機微が見事に描かれた作品です。寅次郎とリリーの愛憎劇が展開される中での笑いや涙は、今なお多くの人に感動を与え続けています。

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