男性・女性

『男性・女性』（Masculin féminin: 15 faits précis）は、1966年、ジャン＝リュック・ゴダール監督によって生み出されたフランスとスウェーデンの合作映画です。ゴダール監督の代表作の一つとして、現在も高い評価を受けています。

本作は、19世紀のフランスの文豪、ギ・ド・モーパッサンの短編小説『ポールの恋人』と『合図』を下敷きにしていますが、単なる翻案ではありません。1965年の冬のパリを舞台に、15のエピソードを通して、当時の若者たちの生き様をダイレクトに映し出しています。映画の副題である「15の明白な真実」が示す通り、登場人物たちの恋愛や性、政治への関わりが、ありのままに、そして時に鋭く描き出されています。

映画製作には、ドキュメンタリーや実験映画に造詣の深いプロデューサー、アナトール・ドーマンが関わっています。彼は、ゴダール監督にとって本作が初の共同作業となりましたが、ゴダール監督が目指したシネマ・ヴェリテ（真実映画）の手法に適任の人物でした。さらに、助監督としてジャック・バラティエが参加。バラティエ監督の経験と手腕が、本作の完成に大きく貢献しています。

主演を務めたのは、ゴダールの過去の作品にも出演していたジャン＝ピエール・レオ。本作が彼の初主演作となりました。共演には、当時人気上昇中のシャンタル・ゴヤなど若手俳優たちが名を連ね、それぞれの持ち味を発揮しています。また、ブリジット・バルドーやフランソワーズ・アルディといった著名な女優もカメオ出演しています。その他、多くの俳優や監督、映画関係者が本作に関わっており、その豪華な顔ぶれも話題を呼びました。

撮影監督を務めたのは、ベルギー出身のウィリー・クーラン。彼独特のカメラワークが、映画に独特の雰囲気を与えています。撮影は1965年11月から12月にかけて、パリとストックホルムで行われました。

本作におけるゴダールの演出は、即興的なルポルタージュと綿密な演出を融合させたものでした。若者たちの恋愛や性、そして政治への関心をリアルに描き出すために、シネマ・ヴェリテの手法を用いたインタビューなども取り入れられています。この作品でゴダールは、当時の若者への深い関心を示しました。この関心は、後の彼の作品や活動にも大きな影響を与えました。

ゴダール監督は、本作を「マルクスとコカコーラの子どもたち」と呼ばれたいと語っています。この言葉は、60年代の若者たちの複雑な意識を象徴するものであり、本作のテーマを端的に示しています。

『男性・女性』は1966年3月にフランスで公開され、その後、世界各国で上映されました。日本では1968年に一般公開され、その革新的な映像表現やテーマは、多くの観客に衝撃を与えました。ベルリン国際映画祭では青少年向映画賞と最優秀男優賞を受賞。Rotten Tomatoesでは支持率96%、Metacriticでも93/100の高評価を得ており、批評家からも高い評価を受けています。

本作は、単なる恋愛映画や青春映画ではなく、60年代の社会情勢や若者たちの意識を反映した、ゴダール監督の思想を色濃く反映した作品と言えます。時代を超えて、多くの観客に考えさせ、感動を与え続ける名作です。その革新的な手法、複雑なテーマ、そして豪華なキャストによって、映画史に名を残す作品として評価されています。

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