実験映画
実験映画は、従来の映画の枠にとらわれず、映像表現の新たな可能性を追求する芸術的な実践です。商業的な成功を主な目的とせず、個々の作家が自身の表現を追求する場として発展してきました。その作品は多岐にわたり、物語を実験的に語るものから、作家の日常を捉えた日記映画、抽象的なアニメーション、ドキュメンタリー、映像の視覚効果を追求したフリッカー映画、他の作家の映像を再利用したファウンド・フッテージまで、既存の映画の概念を覆すような作品が含まれます。
さらに、複数の映写機を使った上映や、ループ映像によるインスタレーション、上映中の映像・音声の加工など、映画館という空間にとらわれない拡張映画（エクスパンデッド・シネマ）と呼ばれる表現も実験映画の一分野として存在します。これらの作品は、観客の知覚や体験を揺さぶり、映画というメディアの可能性を広げてきました。
実験映画の起源は、1920年代のアヴァンギャルド芸術運動に遡ります。ダダイズムやシュルレアリスムなどの影響を受けた初期の実験映画は、既存の社会規範や芸術観に挑戦し、映像表現の新たな地平を切り開きました。マン・レイの『理性への回帰』やルネ・クレールの『幕間』、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリの『アンダルシアの犬』などは、その代表的な作品として知られています。
アメリカでは、1940年代から実験映画が盛んになり、マヤ・デレンの『午後の網目』やケネス・アンガーの『花火』などが制作されました。1950年代には、戦後の市場に流出した16ミリカメラの普及により、メリー・メンケンの『Hurry! Hurry!』など、多くの実験映画が制作されました。
日本では、戦前から実験的な映像作品が存在しましたが、個人映画としての実験映画が本格的に始まったのは1950年代からです。1960年代には、アメリカ実験映画を紹介する上映企画が大きな反響を呼び、実験映画は鑑賞するだけでなく、自身で創造する映画という意識が観客に広まりました。
実験映画の世界には、数多くの個性的な作家が存在します。
ヨーロッパの実験映画作家には、ルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリ、ルネ・クレール、フェルナン・レジェ、マン・レイ、ハンス・リヒター、オスカー・フィッシンガー、レン・ライ、ローラ・マルヴェイ、シャンタル・アケルマン、サリー・ポッター、アイザック・ジュリアンなどがいます。
北米の実験映画作家には、マヤ・デレン、ハリー・スミス、ジョナス・メカス、ケン・ジェイコブズ、ジャック・スミス、ケネス・アンガー、スタン・ブラッケージ、マイケル・スノウ、ホイットニー兄弟、ナサニエル・ドースキー、アンディ・ウォーホル、ブルース・ベイリーなどがいます。
日本の実験映画作家も、戦前から現在に至るまで、多くの才能が輩出されています。
戦前：衣笠貞之助、岩崎昶、中井正一、荻野茂二などが挙げられます。また、森紅、岡野卯馬吉、金子安雄、阿保祐太郎、坂本為之、今枝柳蛙などの作品も存在しましたが、現在は見ることができません。
戦後から1960年代：松本俊夫、山口勝弘、グラフィック集団（石元泰博、大辻清司、辻彩子）、飯村隆彦、高林陽一、大林宣彦、足立正生、城之内元晴、ドナルド・リチー、寺山修司、三島由紀夫などがいます。
1970年代：金井勝、かわなかのぶひろ、田名網敬一、鈴木志郎康、相原信洋、古川タク、奥山順市、居田伊佐雄、山崎博、萩原朔美、出光真子、中島崇、中谷芙二子、中嶋興などがいます。
1980年代：伊藤高志、山田勇男、メタフィルム（映画についての映画）の森下明彦、太田曜、山崎幹夫、加藤到、IKIF（石田木船映像工場、木船徳光と石田園子の二人で結成）、黒坂圭太、山村浩二などがいます。
1990年代：大木裕之、和田淳子、寺嶋真里、末岡一郎、帯谷有理、村上賢司などがいます。
2000年代：石田尚志、井上タケシ（QOOV）、牧野貴、宮崎淳、辻直之、和田淳、大山慶、清古尊などがいます。
2010年代：石川亮、池添俊、磯部真也、大内里絵子、南俊輔などがいます。
実験映画は、一般的な映画館では上映される機会が少ないため、専門の場所で上映されることが多いです。
日本では、シアター・イメージフォーラムや東京都写真美術館などが実験映画の上映に力を入れています。シアター・イメージフォーラムでは、実験映画に関する特集上映や、国内外の実験映画を公募・上映する「イメージフォーラムフェスティバル」（現在は「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」）が開催されています。
また、東京都写真美術館では、恵比寿映像祭が毎年開催されており、実験映画の上映だけでなく、パフォーマンスやインスタレーション展示、トークセッションなども行われています。
その他、アナログメディア研究会、８mmFILM小金井街道プロジェクト、UPLINK渋谷、LUMEN gallery、マルバ会館、EZO FILM、VIDEO PARTY、スパイスフィルムなども、実験映画の上映を積極的に行っています。
実験映画についてより深く知るための文献として、以下のような書籍が挙げられます。
A.L.リーズ（著）『実験映像の歴史：映画とビデオー規範的アヴァンギャルドから現代英国での実験実践』
伊奈 新祐（著）『メディアアートの世界―実験映像1960‐2007』
西嶋憲生 （著）『生まれつつある映像―実験映画の作家たち』
A. L. Rees, A History of Experimental Film and Video
Malcolm Le Grice, Abstract Film and Beyond
Scott MacDonald, A Critical Cinema
Scott MacDonald, Avant-Garde Film: Motion Studies
Holly Rogers, Sounding the Gallery: Video and the Rise of Art-Music
Holly Rogers and Jeremy Barham, the Music and Sound of Experimental Film
James Peterson, Dreams of Chaos, Visions of Order: Understanding the American Avant-Garde Cinema
Jack Sargeant, Naked Lens: Beat Cinema
P. Adams Sitney, Visionary Film: The American Avant-Garde
Michael O'Pray, Avant-Garde Film: Forms, Themes and Passions
David Curtis (ed.), A Directory of British Film and Video Artists
David Curtis, Experimental Cinema - A Fifty Year Evolution
Wheeler Winston Dixon, The Exploding Eye: A Re-Visionary History of 1960s American Experimental Cinema
Wheeler Winston Dixon and Gwendolyn Audrey Foster (eds.) Experimental Cinema - The Film Reader
Stan Brakhage, Film at Wit's End - Essays on American Independent Filmmakers
Stan Brakhage, Essential Brakhage - Selected Writings on Filmmaking
Parker Tyler, Underground Film: A Critical History
Jeffrey Skoller Shadows, Specters, Shards: Making History in Avant-Garde Film
Jackie Hatfield, Experimental Film and Video
Gene Youngblood, Expanded Cinema
Dominique Noguez, Éloge du cinéma expérimental
Al Rees, David Curtis, Duncan White, Stephen Ball, Editors, Expanded Cinema: Art, Performance and Film
実験映画に関連する分野として、以下のようなものが挙げられます。
メディアアート
パフォーマンスアート
アンダーグラウンド映画
ビデオ・アート
純映画
拡張映画（エクスパンデッド・シネマ）
構造映画
抽象映画
実験映画に関する情報を提供するWebサイトとして、以下のようなものがあります。
イメージフォーラム/ダゲレオ出版
東京都写真美術館「TOP MUSEUM」
実験映画
西村智弘「日本のアブストラクトシネマ」
アナログメディア研究会
8mmFILM小金井街道プロジェクト
UPLINK渋谷
LUMEN gallery
マルバ会館
EZO FILM
VIDEO PARTY
8ミリ映画を楽しもう
これらの情報を参考に、実験映画の世界を深く探求してみてください。
さらに、複数の映写機を使った上映や、ループ映像によるインスタレーション、上映中の映像・音声の加工など、映画館という空間にとらわれない拡張映画（エクスパンデッド・シネマ）と呼ばれる表現も実験映画の一分野として存在します。これらの作品は、観客の知覚や体験を揺さぶり、映画というメディアの可能性を広げてきました。
実験映画の歴史
実験映画の起源は、1920年代のアヴァンギャルド芸術運動に遡ります。ダダイズムやシュルレアリスムなどの影響を受けた初期の実験映画は、既存の社会規範や芸術観に挑戦し、映像表現の新たな地平を切り開きました。マン・レイの『理性への回帰』やルネ・クレールの『幕間』、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリの『アンダルシアの犬』などは、その代表的な作品として知られています。
アメリカでは、1940年代から実験映画が盛んになり、マヤ・デレンの『午後の網目』やケネス・アンガーの『花火』などが制作されました。1950年代には、戦後の市場に流出した16ミリカメラの普及により、メリー・メンケンの『Hurry! Hurry!』など、多くの実験映画が制作されました。
日本では、戦前から実験的な映像作品が存在しましたが、個人映画としての実験映画が本格的に始まったのは1950年代からです。1960年代には、アメリカ実験映画を紹介する上映企画が大きな反響を呼び、実験映画は鑑賞するだけでなく、自身で創造する映画という意識が観客に広まりました。
実験映画作家
実験映画の世界には、数多くの個性的な作家が存在します。
ヨーロッパの実験映画作家には、ルイス・ブニュエル、サルバドール・ダリ、ルネ・クレール、フェルナン・レジェ、マン・レイ、ハンス・リヒター、オスカー・フィッシンガー、レン・ライ、ローラ・マルヴェイ、シャンタル・アケルマン、サリー・ポッター、アイザック・ジュリアンなどがいます。
北米の実験映画作家には、マヤ・デレン、ハリー・スミス、ジョナス・メカス、ケン・ジェイコブズ、ジャック・スミス、ケネス・アンガー、スタン・ブラッケージ、マイケル・スノウ、ホイットニー兄弟、ナサニエル・ドースキー、アンディ・ウォーホル、ブルース・ベイリーなどがいます。
日本の実験映画作家も、戦前から現在に至るまで、多くの才能が輩出されています。
戦前：衣笠貞之助、岩崎昶、中井正一、荻野茂二などが挙げられます。また、森紅、岡野卯馬吉、金子安雄、阿保祐太郎、坂本為之、今枝柳蛙などの作品も存在しましたが、現在は見ることができません。
戦後から1960年代：松本俊夫、山口勝弘、グラフィック集団（石元泰博、大辻清司、辻彩子）、飯村隆彦、高林陽一、大林宣彦、足立正生、城之内元晴、ドナルド・リチー、寺山修司、三島由紀夫などがいます。
1970年代：金井勝、かわなかのぶひろ、田名網敬一、鈴木志郎康、相原信洋、古川タク、奥山順市、居田伊佐雄、山崎博、萩原朔美、出光真子、中島崇、中谷芙二子、中嶋興などがいます。
1980年代：伊藤高志、山田勇男、メタフィルム（映画についての映画）の森下明彦、太田曜、山崎幹夫、加藤到、IKIF（石田木船映像工場、木船徳光と石田園子の二人で結成）、黒坂圭太、山村浩二などがいます。
1990年代：大木裕之、和田淳子、寺嶋真里、末岡一郎、帯谷有理、村上賢司などがいます。
2000年代：石田尚志、井上タケシ（QOOV）、牧野貴、宮崎淳、辻直之、和田淳、大山慶、清古尊などがいます。
2010年代：石川亮、池添俊、磯部真也、大内里絵子、南俊輔などがいます。
実験映画の上映
実験映画は、一般的な映画館では上映される機会が少ないため、専門の場所で上映されることが多いです。
日本では、シアター・イメージフォーラムや東京都写真美術館などが実験映画の上映に力を入れています。シアター・イメージフォーラムでは、実験映画に関する特集上映や、国内外の実験映画を公募・上映する「イメージフォーラムフェスティバル」（現在は「東アジア・エクスペリメンタル・コンペティション」）が開催されています。
また、東京都写真美術館では、恵比寿映像祭が毎年開催されており、実験映画の上映だけでなく、パフォーマンスやインスタレーション展示、トークセッションなども行われています。
その他、アナログメディア研究会、８mmFILM小金井街道プロジェクト、UPLINK渋谷、LUMEN gallery、マルバ会館、EZO FILM、VIDEO PARTY、スパイスフィルムなども、実験映画の上映を積極的に行っています。
参考文献
実験映画についてより深く知るための文献として、以下のような書籍が挙げられます。
A.L.リーズ（著）『実験映像の歴史：映画とビデオー規範的アヴァンギャルドから現代英国での実験実践』
伊奈 新祐（著）『メディアアートの世界―実験映像1960‐2007』
西嶋憲生 （著）『生まれつつある映像―実験映画の作家たち』
A. L. Rees, A History of Experimental Film and Video
Malcolm Le Grice, Abstract Film and Beyond
Scott MacDonald, A Critical Cinema
Scott MacDonald, Avant-Garde Film: Motion Studies
Holly Rogers, Sounding the Gallery: Video and the Rise of Art-Music
Holly Rogers and Jeremy Barham, the Music and Sound of Experimental Film
James Peterson, Dreams of Chaos, Visions of Order: Understanding the American Avant-Garde Cinema
Jack Sargeant, Naked Lens: Beat Cinema
P. Adams Sitney, Visionary Film: The American Avant-Garde
Michael O'Pray, Avant-Garde Film: Forms, Themes and Passions
David Curtis (ed.), A Directory of British Film and Video Artists
David Curtis, Experimental Cinema - A Fifty Year Evolution
Wheeler Winston Dixon, The Exploding Eye: A Re-Visionary History of 1960s American Experimental Cinema
Wheeler Winston Dixon and Gwendolyn Audrey Foster (eds.) Experimental Cinema - The Film Reader
Stan Brakhage, Film at Wit's End - Essays on American Independent Filmmakers
Stan Brakhage, Essential Brakhage - Selected Writings on Filmmaking
Parker Tyler, Underground Film: A Critical History
Jeffrey Skoller Shadows, Specters, Shards: Making History in Avant-Garde Film
Jackie Hatfield, Experimental Film and Video
Gene Youngblood, Expanded Cinema
Dominique Noguez, Éloge du cinéma expérimental
Al Rees, David Curtis, Duncan White, Stephen Ball, Editors, Expanded Cinema: Art, Performance and Film
関連項目
実験映画に関連する分野として、以下のようなものが挙げられます。
メディアアート
パフォーマンスアート
アンダーグラウンド映画
ビデオ・アート
純映画
拡張映画（エクスパンデッド・シネマ）
構造映画
抽象映画
外部リンク
実験映画に関する情報を提供するWebサイトとして、以下のようなものがあります。
イメージフォーラム/ダゲレオ出版
東京都写真美術館「TOP MUSEUM」
実験映画
西村智弘「日本のアブストラクトシネマ」
アナログメディア研究会
8mmFILM小金井街道プロジェクト
UPLINK渋谷
LUMEN gallery
マルバ会館
EZO FILM
VIDEO PARTY
8ミリ映画を楽しもう
これらの情報を参考に、実験映画の世界を深く探求してみてください。
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