町田行彦

町田行彦：華麗なる野球人生の軌跡

1934年3月8日、長野県長野市に生まれた町田行彦氏は、日本のプロ野球界に名を刻んだ伝説的な選手にして名伯楽指導者である。長野北高校時代は、恵まれた体格と抜群の打撃センスで頭角を現し、高校通算36本塁打を記録。甲子園出場は果たせなかったものの、その潜在能力は高く評価されていた。同期にはのちにプロ野球選手となる松橋慶喜氏、1学年下には山岸静馬氏がいた。

1952年、国鉄スワローズに入団。当初は三塁手であったが、強肩を生かした外野手への転向を余儀なくされる。すると、持ち前の才能が開花。1953年には開幕から右翼手として起用され、7月には四番打者も経験するなど、中心選手として活躍の場を広げていく。1954年には規定打席に到達し、着実に実力をつけ、1955年にはついに31本塁打を放ち、セ・リーグ最年少（当時21歳）での本塁打王の栄冠に輝く。打率.280という高打率も記録し、ベストテン入りを果たす快挙を成し遂げた。一方で、リーグ最多となる98個の三振も記録しており、「三振王で本塁打王」という異色の称号も手にしている。この記録は2021年に村上宗隆選手に並ぶまで、リーグ単独記録として君臨した。

翌1956年は開幕から4番打者として期待されたものの、故障の影響で57試合の出場に留まった。しかし、1957年には復活し、本塁打王にあと一歩と迫る22本塁打を記録。その後も主力打者として活躍し、「西のホームランキング中西太、東のホームランキング町田行彦」と称されるまでに成長を遂げた。1958年4月5日の巨人戦では、長嶋茂雄氏が金田正一投手からデビュー戦4打席連続三振を喫した試合で決勝本塁打を放つなど、数々の劇的な場面を演出した。しかし、その後は腰痛に悩まされ、徐々に打撃成績は下降線をたどっていく。

1965年、国鉄スワローズの経営権がサンケイに譲渡されたことに伴い、チーム再建策の一環として自由契約となり、巨人にテスト生として入団。しかし、27試合の出場に留まり、1965年シーズンをもって現役を引退した。

引退後は指導者の道へ。巨人、ヤクルト、台湾の統一ライオンズなどで二軍監督や打撃コーチ、守備走塁コーチなどを歴任。巨人の二軍打撃コーチとしては長くチームに貢献し、1990年から1991年には二軍監督としてチームを率いた。台湾の統一ライオンズでは、2年連続リーグ優勝に貢献し、1997年には代理監督も務めた。

選手としては強肩の外野手として知られ、3度のリーグ最多補殺を記録している。1959年にはサイクルヒットも達成している。通算三振数848個は、当時セ・リーグ記録であった。

高校時代の同級生である松橋慶季氏（元セ・リーグ審判員）とは、国鉄スワローズでも共にプレーしており、長野高校の創立100周年記念行事では、二人並んで対談を行うなど、深い友情で結ばれていたことがうかがえる。

町田行彦氏は、選手として、そして指導者として、プロ野球界に多大な貢献を果たした。その輝かしい功績は、後世のプロ野球選手たちに長く語り継がれるだろう。数々の記録、エピソードとともに、その波乱に満ちた、そして輝かしい野球人生を振り返ることができる。

もう一度検索