画仙紙

画仙紙：書画のための高級和紙

古来より書画に用いられてきた画仙紙は、その独特の風合いと高い表現力で、多くの書家や画家を魅了してきた高級な和紙です。主に白色を呈し、雅仙紙、画箋、雅箋、雅宣、画牋など、様々な呼び名を持ちます。

画仙紙は、墨の発色、にじみ、かすれといった繊細な表現を最大限に引き出すために開発されました。その特性を活かすため、大きさ、厚さ、紙質など、多様な種類が存在します。

その歴史は古く、中国の宣州（現在の安徽省宣城市）で産出される宣紙の影響が強く見られます。江戸時代には中国から宣紙が輸入され、広く使用されていましたが、第二次世界大戦後は、日本の各地でも中国の製法を模倣した画仙紙が生産されるようになりました。中国製のものは「本画仙」、日本製のものは「和画仙」と呼ばれ、それぞれに特徴があります。

日本の和画仙は、産地によって様々な種類に分類されます。甲州画仙、因州画仙、越前画仙、土佐画仙、伊予画仙などが有名で、それぞれ異なる原料や製法によって、独特の風合いを生み出しています。

画仙紙の種類と特徴

画仙紙は、大きさによって大画仙、中画仙、小画仙に分類されます。また、厚さによって単箋、二層、三層といった種類があり、紙質も多様です。煮硾箋（しゃついせん）、玉版箋（ぎょくはんせん）、羅紋箋、豆腐箋など、それぞれの名称が持つ独特の風合いと特徴があります。

日本で一般的に書道用画仙紙の基準サイズとされているのは「全紙」で、これは中国で言うところの小画仙に相当します。全紙の大きさは約70cm×136cmで、その縦半分に切った35cm×136cmのサイズは「半切」と呼ばれています。

宣紙：画仙紙のルーツ

画仙紙のルーツである宣紙は、中国安徽省宣城市で産出される書画用紙です。良質な原料となる青檀（セイタン）という樹皮を主原料とし、藁を加えて作られています。墨の滲み、かすれ、発色の美しさを追求し、長年にわたる研究開発によって生み出された、伝統と歴史を誇る高級紙です。

中国では、大型の書画用紙を総じて「書画紙」と呼びますが、宣紙はその中でも、伝統的な製法と産地である宣城（現在の安徽省涇県烏溪地域）で生産されたものだけを指します。ただし、古くから有名な「宣紙」の名を利用し、他産地の製品にも「宣紙」の名称を冠した製品も多く存在します。福建宣紙はその代表例です。

宣紙の中でも、最高級のブランドとして知られるのが、涇県の「紅星牌」です。

日本の画仙紙の製造

日本においては、江戸時代から中国製の画仙紙（唐紙）が輸入され、文人たちの間で愛用されてきました。第二次世界大戦後、中国からの輸入が途絶えたことを受け、山梨県、鳥取県、愛媛県などの和紙産地で、中国風の書画用紙の生産が始まり、それが現在の日本の画仙紙です。

日本の画仙紙に使用される原料は様々です。甲州画仙ではミツマタの古紙と稲わら、因州画仙では木材パルプと藁（稲わら・麦わら）が主に用いられ、ショウガなどの非木材繊維も使用される場合があります。

近年では、台湾、中国本土、フィリピンなどでも、日本式の画仙紙に似た紙が生産されており、安価な画仙紙として日本にも輸入されています。

画仙紙は、書道や日本画、水墨画といった伝統芸術において欠かせない重要な素材であり、これからもその高い品質と表現力で、多くのアーティストを支え続けるでしょう。

もう一度検索