畔柳二美

畔柳二美（くろやなぎ ふみ）

1912年1月14日、北海道千歳市に生まれた小説家、畔柳二美。旧姓は遠藤。1965年1月13日、52歳でその生涯を閉じました。

生い立ちと文学との出会い

畔柳二美は、王子製紙の発電所技師であった父の仕事の関係で、幼少期を北海道各地で過ごしました。1928年に北海高等女学校を卒業。女学校時代から文学に深く親しみ、特に佐多稲子の作品に感銘を受け、文通を始めたことが彼女の文学活動のきっかけとなりました。佐多稲子の勧めにより、プロレタリア文学にも触れ、社会への関心を深めていきました。

上京と結婚

1933年、マリー・ルイズ美容学校に通うために上京。佐多稲子との交流を深める一方で、東京帝国大学の学生だった畔柳貞造と出会い、1936年に結婚。夫の転勤で関西へ移り住み、新婚生活を送りました。しかし、夫は1942年に召集され、フィリピンで戦死。畔柳二美は戦争未亡人となり、深い悲しみを経験します。

作家活動の開始と「抵抗の文学」

戦争未亡人となった畔柳二美は、その苦悩を「限りなき困惑」「川音」などの作品に昇華させました。これらの作品は1951年の芥川賞候補にもなっています。1948年、佐多稲子の推薦により短編小説「夫婦とは」を『女人芸術』に発表。この作品は、民主主義新憲法下の夫婦生活を鋭く風刺した作品として評価されました。

1950年代に入ると、「銀夫妻の歌」「限りなき困惑」「川音」などを発表し、社会の不条理や矛盾に敏感に反応する、いわば「抵抗の文学」ともいえる作品群を世に送り出しました。

代表作「姉妹」とその映画化

1953年、佐々木基一の誘いを受け『近代文学』に「姉妹」を発表。この作品は好評を博し、連載後、1954年に単行本として出版されました。「姉妹」は、北海道の発電所に育った二人の女学生を主人公に、大正末期から昭和初期の世相や生活を描いた作品で、読者の共感を呼びました。特に、社会の不条理に反発する妹の姿は、作者自身の姿を反映していると評され、1954年度の毎日出版文化賞を受賞しています。1955年には映画化もされ、多くの人々に感動を与えました。

その後の活動と早すぎる死

「姉妹」の成功により、畔柳二美は経済的な余裕を得ることができましたが、執筆活動の無理が祟り、晩年は体調を崩すことが多くなりました。1964年に癌の手術を受けたものの、回復することなく、1965年1月13日、52歳という若さで亡くなりました。

作品と作風

畔柳二美は、長編小説、短編小説、随筆、翻訳など、多岐にわたる作品を残しました。特に「姉妹」「こぶしの花の咲く頃」「青いりんごのふるさと」などは、北海道の自然や人々の生活を舞台に、成長期の少年少女たちの姿を生き生きと描いた作品として知られています。平明なリアリズムの作風であり、新書版や児童向けの作品も多く、幅広い層に支持されました。また、彼女の作品には、社会や人生への鋭い観察や批判精神が込められており、プロレタリア文学の影響も色濃く感じられます。

畔柳二美は、自身の経験と社会への強い関心を基に、多くの人々に感動を与える作品を生み出した作家でした。彼女の早すぎる死は、文学界にとって大きな損失だったと言えるでしょう。

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