留守宅の事件

留守宅の事件

『留守宅の事件』は、松本清張が1971年に発表した短編小説で、日本の推理小説の中でも特に評価される作品の一つである。初めて掲載されたのは『小説現代』の1971年5月号であり、その後、短編集『証明』に収録され、1976年に文春文庫から刊行された。読者の人気を受けて、1972年には第3回小説現代読者賞を受賞している。

この作品は、東京都足立区の西新井に住む栗山敏夫の家庭に起こる衝撃的な事件を描いている。物置で栗山の妻・宗子の死体が見つかり、彼女の友人である萩野光治が殺人容疑で逮捕される。しかし、捜査を担当する石子警部補は、萩野が宗子を殺害できたのか疑念を抱く。栗山は自動車セールスマンとして東北を営業しており、その間に東京で宗子を殺すことができたのかという点に注目する。

物語は、栗山の素行や萩野の宗子に対する好意を背景に展開し、真犯人を見つけるための捜査は一筋縄ではいかない。意外な展開や緊張感が作品全体を通じて保たれ、読者はページをめくる手を止められない。

また、この短編小説は1996年と2013年の二度、テレビドラマ化されている。1996年版は日本テレビ系列の『火曜サスペンス劇場』で放送され、視聴率は16.8%を記録。一方、2013年版はテレビ東京系列の『水曜ミステリー9』枠で放送され、多くの観客から注目を集めた。ドラマ版では、原作にはないキャラクターやストーリーの設定が加えられ、よりドラマティックな構成になっている。

両ドラマ版とも、原作を踏まえつつ新たな展開を盛り込むことで、清張作品の魅力を引き立てている。統一感のある演技力を持ったキャスト陣が作品を彩り、視聴者はそれぞれのエピソードを楽しむことができる。

『留守宅の事件』は、松本清張の豊かな語り口と独特のストーリーテリングによって、今なお多くの読者や視聴者を魅了し続けている作品である。結末に至るまでの緊張感があり、普遍的なテーマとして「人間関係の複雑さ」「信頼の危うさ」を描き出している点が、多くの支持を集めている理由の一つである。

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