留守政府

留守政府（るすせいふ）

留守政府は、明治初期において、岩倉使節団が欧米へ向かう際に国内での政治を維持するために組織されました。この期間、明治政府の指導層であった三条実美をはじめとする面々が留守政府の運営にあたりました。岩倉使節団が出発したのは明治4年（1871年）7月14日で、欧米歴訪の間、国内ではさまざまな政治改革が行われる必要がありました。

明治4年の廃藩置県によって、従来の藩制度は解体され、迅速な行政システムの構築が求められました。そのため、留守政府は太政大臣の三条を筆頭に、西郷隆盛や井上馨、大隈重信、板垣退助、江藤新平、大木喬任らが集まり、改革の指揮を取りました。特に、使節団派遣当初の状況では、各省の高官に対して「大臣・参議・大輔盟約書」を結び、留守中に大きな変革を行わないことを約束しました。しかし、廃藩置県に関連する後始末が必要な状況下で、その緊急性からさまざまな改革が進められます。

留守政府は、学制や徴兵令、地租改正、太陽暦の導入、司法制度の整備、さらにはキリスト教に対する弾圧の中止といった重要な改革に着手しました。これらの改革は、急を要する状況であったため、迅速に実施されましたが、結果として政権内外の緊張を引き起こす原因ともなりました。特に、西郷隆盛をめぐる遣韓問題は、留守政府と岩倉使節団の対立を招き、明治6年の政変へと繋がります。

廃藩置県と留守政府は、緊密に関わり合っています。当時、留守政府による改革が「大臣・参議・大輔盟約書」第6条に違反しているとの批判がありましたが、近年ではその施策が第7条に基づく廃藩置県の後始末の一環であり、事前に大筋で了承されていたとする見解も出てきています。さらに、廃藩置県により従来の行政システムが解体されたため、迅速に代替の体制を構築する必要があったのも事実です。

留守政府の改革の中でも特に重要だったのが学制や徴兵令、地租改正です。これらは、新たな教育や軍事システムの確立に向けたものであり、元々の藩制度を支えてきた要素からの転換が求められる厳しい状況でした。士族や農民層にとっては、既存の権利や地位を脅かされる改革であったため、反政府活動の誘因が増すことに繋がりました。

さらに、留守政府の運営には人事問題や財政問題も影を落としました。対立が高まる中で、特に西郷隆盛は「強兵」を推進しようとしており、その立場は大蔵省の推進する「富国」との相容れないものでした。西郷の財政や人事を巡る問題が深刻化する中で、留守政府内の信頼関係は希薄になり、最終的には相互に対立し、政変を引き起こす要因となりました。

このように、留守政府は明治初期の政治過程において極めて重要な役割を果たしましたが、その活動はさまざまな問題を内包していました。その結果、歴史的な政変や社会動乱を引き起こし、近代日本の形成において欠かせない一章となったのです。

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