畦

畦（あぜ）とは

畦とは、水田と水田の境に、泥土を盛り上げて作られた土手のことです。水田内の水を外に漏らさないようにする役割があり、水田の区画を区切る役割も担っています。また、畦は「畦畔（けいはん）」や「泥畦」とも呼ばれます。水田に水を張る前には、毎年「畦塗り」という修理作業が行われ、近年では「畦塗り機」も利用されています。畦は、水田を回る際の道としても利用され、これを「畦道（あぜみち）」や「畷（なわて）」と呼びます。

畦の歴史

日本における稲作の歴史とともに、畦の歴史も古く、弥生時代前期にはすでに畦を持つ水田が作られていました。当時の水田は、畦道と堤の役割を兼ねた大きな畦畔で囲まれ、その中に小さな区画が並ぶ「小区画水田」が主流でした。この形態は、弥生時代から古墳時代にかけて全国的に広まりました。

畦の構造

畦は、隣接する水田の所有者が異なる場合、その境界を示す役割も果たします。畦の位置は、高低差によって異なり、高低差が少ない場合は畦の中央、高低差が大きい場合は低い方の水田側に設定されることが多いです。低い方の水田の管理用に、小さな畦を重ねて設けることもあります。また、冬場に畦が崩れないよう、低い潅木を植えて目印とすることもあります。

水路との間に設けられる畦は、特に「溝畔」と呼ばれ区別されます。水路は公共の土地であることが多く、畦の境界は水田側の端に設定されることが一般的です。

畦の形状や寸法は、地域や土質によって様々で、一定の形式はありません。近年のほ場整備によって作られた畦では、天端幅は300mmから600mm程度、法面勾配は1:1（45度）程度とされることが多いです。高低差が大きい場合は、法面勾配を緩やかにしたり、途中に小段を設けたりして、安定性を高めています。畦は水密性を保つため、泥土を乾燥させてから突き固め、整形するのが一般的です。

畦の利用と注意点

畦や畦道は基本的に私有地であり、特に畦の天端は狭いため、人が乗ると崩れたり水田に落ちたりする危険性があります。そのため、地主や耕作者以外の人が勝手に立ち入ることは避けるべきです。畦道は、農作業のための通路や農道として利用される場合もあります。畦は狭い土地ですが、枝豆などの作物を植え、有効活用されることもあります。畦は、稲作文化とともに発展し、様々な利用方法がある、貴重な土地と言えるでしょう。

畦の維持管理

排水条件や土質によっては、泥土を盛り上げただけでは、畦の機能を十分に果たせない場合があります。その場合、土の入れ替えや排水設備の整備が望ましいですが、コストを抑えるために、塩化ビニール製の畦シートを埋め込んだり、法面に沿わせたりするなどの対策が取られることもあります。また、強度を補うために、石を積んだり、瓦を並べたり、コンクリート製のブロックを使用したりすることもあります。

カメムシ対策と畦の管理

斑点米の原因となるカメムシは、畦や周辺に生える雑草に生息します。そのため、カメムシ対策として、殺虫剤の使用と併せて、刈払機を利用した畦の除草が行われます。

参考文献

滝沢誠「第7章 日本型農耕社会の形成-古墳時代における水田開発-」『食糧生産社会の考古学』（現代の考古学3）朝倉書店 1999年 pp.173-193
若狭徹「17.広がる小区画水田」『ビジュアル版・古墳時代ガイドブック』（シリーズ「遺跡を学ぶ」別冊04）新泉社 2013年 pp.68-71

関連項目

畔
圃場整備
農道
里道
* 彼岸花

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