番 (春秋)

番（ばん）

番は、古代中国の周代に存在した諸侯国であり、潘、鄱とも表記されます。爵位は伯爵で、国君は己姓を名乗り、遠古時代の祝融八姓の一つである昆吾の末裔とされています。このことは、楚と同祖であることを示唆しており、両国は歴史的に深い関係を持っていました。

歴史

番は、西周時代には現在の河南省焦作市温県付近に存在していました。しかし、西周末期には淮河の上流（現在の河南省信陽市一帯）へと南遷し、さらに春秋時代早期以降は固始・淮浜地区へと東遷しました。この移動は、当時の政治情勢や周辺諸国との関係によって引き起こされたと考えられます。

西周中晩期には、番の貴族が周王室の要職に就いており、『詩経』には「番維司徒」と記されています。また、「番氏嫁女于周」とあるように、周王室と縁戚関係を結ぶなど、密接な関係を築いていました。春秋時代中期には、楚の附庸国となり、後に呉によって併呑されました。

『春秋左氏伝』には、呉の太子終纍が楚の舟師を破り、潘子臣らを捕虜にした記事があります。また、『史記』には、呉が楊を伐って番を奪取したことや、夫差が番国の旧地で楚と戦ったことが記されています。これらの記録から、番が春秋時代において、楚と呉の勢力争いの舞台となったことがわかります。

政治と文化

国姓は己姓であり、昆吾の末裔とされています。楚の君王と同源であり、番が楚の附庸国になると、公族は楚に仕えました。楚の穆王の太師である潘崇や、荘王の太師である潘尫などが著名です。これらの人物の存在は、番の公族が楚の政治において重要な役割を果たしていたことを示しています。

歴代君主

番の歴代君主としては、以下のような人物が知られています。

番伯官曾（西周晩期）
番伯者孫（西周晩期）
番君𨠣伯（西周末東周初）
番君□（春秋早期）
番君酓（春秋早期前段）
番君者君（春秋早期後段）
番君伯攏（春秋早至中期）
番君召（春秋早至中期）
鄱子成周
潘子（紀元前530年）
潘子臣（紀元前504年）

これらの君主たちは、それぞれの時代において番を統治し、その歴史を形作ってきました。

遺跡

番の遺跡としては、番国故城が知られています。この遺跡は、当時の番の文化や生活を知る上で重要な手がかりとなっています。

まとめ

番は、周代から春秋時代にかけて存在した諸侯国であり、その歴史は楚との関係や、周辺諸国との勢力争いに深く関わっていました。番の歴史を理解することは、古代中国の歴史を深く理解する上で不可欠であると言えるでしょう。

参考資料

楊伯峻《春秋左伝注》ISBN 7101002625
* 田成方《東周時期楚国宗族研究》武漢大学、2011年

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