異国船打払令

異国船打払令（いこくせんうちはらいれい）は、江戸幕府が1825年に発布した命令であり、日本の沿岸に近づく外国船を追放することを目的としていました。この令は、無二念打払令や文政の打払令などの別名でも知られています。1842年に新たな「薪水給与令」が出された際には、この打払令は廃止されることになります。

この法律の背景には、1808年のフェートン号事件や、1824年に発生した大津浜事件、宝島事件があります。フェートン号事件では、外交交渉が行われず、外国船が日本に近づくことで国の安全が脅かされる事態が生じました。また、大津浜事件と宝島事件でも、外国との接触がもたらすリスクが高まったことが打払令の発令を促す要因とされています。

江戸時代にあたる1816年には、イギリスが琉球への通商を求め、日本海域に何度も船を派遣してきました。特に1825年には、イギリスで経済的な混乱が発生しており、日本側でも不安感が広がっていました。このような国際情勢の影響下で、異国船打払令が出されたのです。

打払令により、日本の沿岸に接近する外国船に対しては直ちに砲撃し、追い返す方針が取られました。また、上陸した外国人には逮捕や処罰が行われることも決められていました。しかし、予想外の事態が起こることもありました。アメリカの商船モリソン号が日本人の漂流者を連れてきた際、イギリスの軍艦と誤認されて砲撃され、その結果、日本国内で批判が集まることになりました。

さらに、当時日本で強大な国と認識されていた清国がアヘン戦争で惨敗し、西洋の軍事力の重要性が明らかとなりました。このことが幕府に与えた影響は大きく、その後1842年には異国船打払令が廃止され、遭難した船に対してのみ補給を認める「薪水給与令」が発令されました。これは、当時の国際的な情勢に鑑みて、より柔軟な対応を図る必要性が増したことを示しています。

阿部正弘の政権下では、外国船の出没が頻繁になり、打払令を復活させるべきかが議論されましたが、沿岸警備の不十分さを理由に復活は困難であると判断されました。このように、日本の外交政策の変遷は、当時の国際関係や脅威に応じて柔軟に対応し続けていたことを示しています。異国船打払令は、その一環として重要な意味を持つ施策といえるでしょう。

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