薪水給与令

薪水給与令について

薪水給与令（しんすいきゅうよれい）は、江戸時代後期に江戸幕府が策定した法令で、外国船に対して飲料水や燃料を供給することを認めたものです。この法令の発布は、19世紀初頭に外国との接触が増え、日本の外交方針が変わり始めたことを反映しています。

発布の背景

19世紀初頭、ロシアをはじめとする外国船が日本の通商を求めて来航し、特にロシア帝国のニコライ・レザノフが注目されています。当時、徳川家斉が統治する幕府は、対外国政策を模索していました。文化3年（1806年）には、「文化の薪水給与令」が発布され、これにより当局は穏便に外国船を出国させる方向性を選びました。

しかし、この法令が施行されてからわずか1年後、文化露寇（ぶんかろこう）というロシアの侵入事件が発生し、幕府は急遽「ロシア船打払令」を制定します。このように、外国船に対する対応が急変する中で、薪水給与令は早々に撤回されてしまいました。幕府内の政策が安定しない状況がうかがえます。

増大する圧力

文政8年（1825年）には、幕府が外国船を排除する方針として「異国船打払令」が出されますが、これに対する批判が高まっています。この流れを受けて、モリソン号事件が発生し、外国船に対する圧力がますます強くなりました。加えて、清におけるアヘン戦争の敗北が江戸幕府に衝撃を与え、日本の安全保障上の問題を再考するきっかけとなります。

最後の方針転換

こうした国際情勢の変化を受けて、幕府は政策を転換せざるを得ませんでした。天保11年（1840年）には、外国船に対して厳しい措置が取られていましたが、天保13年（1842年）に発布された「天保の薪水給与令」においては、遭難した外国船に限り水と燃料の供給が認められることとなります。これは、当時の国際情勢において日本がなんらかの形で外国と接触せざるをえなかった苦しい決断だったといえるでしょう。

まとめ

薪水給与令は、日本の外交の歴史において重要な一歩でした。当初の穏便な対応から、次第に変化する国際情勢を受けて政策が変わる様子が浮かび上がります。この法令を通じて、江戸幕府は外国との関係の構築を試み、その後の開国へとつながる道筋を作ることになります。関連項目としては、異国船打払令や天保の改革、日米和親条約なども、同時代の日本の外交活動に関連しています。

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