畳箱

畳箱（たとうばこ）は、絵画の額縁や貴重な作品、建築図面などを大切に保管・保護するために用いられる特殊な箱です。一般には単にタトウ、あるいはタトウ箱とも呼ばれ、その用途と構造に特色があります。

この名称は、日本の伝統的な紙である畳紙（たとうがみ）に由来するとされています。畳紙は元来、和服や紙類を包むために使われた丈夫な紙であり、畳箱も同様に大切なものを包み込む役割を担うことから、その名が付けられたと考えられます。

畳箱は特に、美術品としての額縁や、損傷させたくない価値のある作品、重要な書類などを収納する際に選ばれます。これらの品物を収める際には、黄袋（きぶくろ）と呼ばれる布製の袋と併用されることが一般的です。黄袋は作品自体を直接箱の内部に触れさせず、擦れや汚れから保護する緩衝材のような役割を果たします。

畳箱の最も特徴的な点はその構造にあります。これは「タトウ式」と呼ばれ、あたかも大型の封筒を立体的に組み上げたような形状をしています。箱本体の上部に設けられた蓋となる部分は、本体の縁を乗り越えるように折り曲げられ、さらにその端が本体の内側や側面に沿って折り返されます。この折り返された部分に紐が通されており、その紐を本体に付いた留め具（多くは紙や布でできた輪）に結びつけることで、蓋がしっかりと固定される仕組みです。この簡潔ながらも堅牢な構造により、内容物が不意に飛び出すのを防ぎます。

畳箱の本体は、主に厚手の紙や合板（ベニヤ板）などで作られ、十分な強度を持たせてあります。その表面には、内容物を傷つけないよう、また見た目の美しさや保護性を高めるために様々な素材が貼られています。例えば、柔らかな綿布や光沢のあるビロード、あるいは伝統的な柿渋紙などが用いられることがあります。これらの表面材によって、畳箱は単なる保護材としてだけでなく、美術品の一部のような風格を持つこともあります。

黄袋について補足すると、本来、その名の通り黄色はウコン（鬱金）の根で染められた天然の色素によるものでした。ウコンには防虫効果があるとされ、大切な美術品を虫害から守る目的があったと考えられています。しかし、現代では化学染料を用いた黄色い布袋が主流となっており、ウコン染めのものは少なくなっています。

額縁の収納に使われる箱は、畳箱だけではありません。より一般的なものとしては、「段ボール差し箱」や「かぶせ式・合わせ箱」（通称「弁当箱」）などがあります。段ボール差し箱は、基本的な構造は畳箱のタトウ式に似ていますが、多くは段ボール製で、上部の折り返し部分を本体に差し込み、タコ糸の付いた文化鋲（小さな丸い鋲）で留める簡素な方式が取られます。こちらの箱にも、内容物の保護のために黄袋が併用されることが多いです。一方、かぶせ式・合わせ箱は、平たい身箱に同じ形の蓋を上からかぶせる構造で、その形状から「弁当箱」とも呼ばれます。こちらは段ボール製が一般的で、内容物はビニール袋などで包んで収納されることが多いです。これらの箱は、畳箱に比べて手軽に利用できますが、頑丈さや保護の度合いにおいては畳箱が優れていると言えるでしょう。

このように、畳箱はその丁寧な作りと構造から、特に価値の高い額縁や美術品、あるいは重要図面などを安全に保管・運搬するための選択肢として重宝されています。黄袋との組み合わせにより、デリケートな内容物を長期にわたって良好な状態で保つ役割を担っています。

関連項目：畳紙

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