畳紙

畳紙（たとうがみ、たとうし）は、日本の伝統的な紙製品の一つです。本来の名称は「たたみがみ」であり、それがウ音便によって「たとうがみ」へと変化したとされています。略して「たとう」やカタカナで「タトウ」とも呼ばれるほか、「帖紙」と表記されることもあります。

畳紙の主要な用途は、結髪の道具や衣類を包むことです。特に、着物などを湿気や虫から守りながら保管するために用いられます。衣類を包む畳紙は、厚手の丈夫な和紙に渋や漆などを塗って耐久性を高め、扱いやすいように折り目がつけられています。使用する際は、包むものを三つ折りにし、さらに紙の端を折り曲げることで、中の物が滑り落ちるのを防ぐ構造になっています。

また、畳紙はかつて、畳んで懐に携帯する「懐紙（かいし）」としても利用されました。この懐紙は、詩歌を書き留めるための詠草（えいそう）や、あるいは鼻紙として使われるなど、多様な目的で用いられました。

懐紙としての用途は、特に神道の世界において特別な意味合いを持つようになりました。単なる実用品としてだけでなく、一種の装飾具としての側面も持つようになったのです。現代において、神職が装束を着用する際には、中啓（ちゅうけい：扇子の一種）とともに畳紙を懐中に納める慣習が多く見られます。この際に用いられる畳紙の種類は、性別によって異なります。男子の神職は白檀紙（びゃくだんし）を、女子の神職は紅鳥ノ紙（くれないとりのこがみ）を使用します。神社においては、この懐紙としての畳紙を指して「畳紙（たたみがみ）」または「帖紙（たとうがみ）」と呼ぶことがあります。

さらに、畳紙は意外な分野でも活用されています。それは、日本における昆虫採集の技術の発展過程で生まれた、昆虫標本の仮整理および保存技術です。捕獲した昆虫を最終的な標本として昆虫針に固定し、データラベルを添付するまでの前段階として、畳紙による保存が行われます。具体的には、四角い脱脂綿の上に殺した甲虫やカメムシ類などを置き、ピンセットを使って形を整えます。その昆虫を、採取データなどを記した半紙で三つ折りに包み込み、端を折り返して中の昆虫が動かないようにします。この畳紙で包んだ状態の標本は、通気性の良い容器に防虫剤とともに入れられ、乾燥させながら一時的に保存されます。この仮整理に用いられる包み紙自体を、そのまま「タトウ」や「四角紙」と呼ぶこともあります。

このように、畳紙はその名称の由来から、衣類包装、懐紙、そして昆虫標本保存に至るまで、日本の文化や技術の中で多様な役割を担ってきた紙製品であると言えます。

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